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「『変化』!」
右手をナナシに翳し、そう呪文を唱えるとナナシの姿が狼から人型にへと徐々に変化する。
狼の前足が人間の手に変わり、狼の毛は黒色のショートヘアに変わった。
この世界の人間とは少し違う顔立ちに、狼の耳と尻尾、鳥のような足はそのままに、一糸纏わぬ姿のナナシが現れる。
「 ?! 」
「あ~ららぁ~」
バッと視線を逸らして真っ赤な顔になるマルバスと、その様子を見て楽しそうな魔王様。
オロオロと慌てふためくリオネルに、俺は溜息を吐くと取り敢えずの処置として自分の上着を脱いでナナシに着せた。
その際に見た、彼女の身体には色々な傷痕があった。
実験で付けられたであろうものから、そうで無いものまで、文字通りイロイロ・・・。
「???」
キョトンと俺を見上げる彼女は、俺が上着のボタンを留め終えると同時にキョロキョロと自分の姿を確認し、人型になっていると分かると青ざめた。




