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ナナシの脳内にありとあらゆる音が一気に流れ込み、そして徐々に彼女の姿が変化し始めた。
初めて会った時のあの姿に完全に変わったと同時に、目に見えて怯えだすナナシ。
耳も尻尾も下がりきったその姿を見て、俺は早々に訓練を中止する事にした。
指輪に魔力を込めようと彼女に近づけば本気で威嚇され、驚いて彼女の思考を読み取れば、例の砦での幻覚を見ているらしい。
俺から逃げるように威嚇しながら後退るナナシの前足から指輪が外れた。
「・・・ミスった・・・あー、もう。俺のバカ!」
ガシガシと頭を掻きながら、魔力を解放し、ナナシに逃げられないように俺諸共結界内に閉じ込める。
序でに周囲の音を遮断する為に遮音結界も四重にして張った。
よく考えれば、ナナシは俺達のところに来るまで能力全開の状態で過ごしていたんだから、封印全解除すればトラウマも発動するわな・・・俺、本当に馬鹿じゃん・・・。
指輪を拾い上げ、結界の隅で縮こまるナナシに静に近寄る。
「・・・ナナシ、悪かった・・・俺のやり方が間違ってたわ。もう少し方針を変えよう」
手を伸ばせば触れるところまで近づいてその場に膝をつくと、そっと彼女に手を差し出した。
あの時同様、彼女の方から近づいてくれるのをじっと待つ。




