缶コーヒーのCMに出演したらNG出しまくってコーヒーを何本も飲むはめになった名俳優
女性マネージャーが、俳優の溝口吾郎にスケジュールを確認する。
「本日のスケジュールは午前中に缶コーヒーのCM撮影、午後はドラマ『名探偵テツヤ』の撮影があります。ドラマの方は少し変わった設定ですが……」
「大丈夫、ちゃんと台本は読んでいる」
「流石です。ではこのままCMの撮影現場に参ります」
マネージャーの運転で、二人はCMの撮影現場に到着した。
CMの責任者が内容について説明する。
「この『グビグビコーヒー』を飲み干して『やっぱり朝はグビグビコーヒー!』と叫んで下さい」
さっそく撮影が始まる。
吾郎は缶コーヒーを飲み干すと、
「やっぱり夜はグビグビコーヒー!」
と叫んだ。
しかし、NGが出てしまう。
「すみません、“夜は”じゃありません!」
「そうだったか、すまない」
撮り直しである。
吾郎は二本目のコーヒーを飲み干し、
「やっぱり朝はグイグイコーヒー!」
思い切り商品名を間違え、これもNGである。
「やっぱり朝はグビグビコーヒー! げぇっぷ!」
ゲップが出た。もちろんNGも出た。
「やっぱり……朝はグビグビ……コーヒー!」
絞り出すような声。当然NGである。
「やっぱり朝はゴクゴクコーヒー!」
ライバル社の商品名。NGに決まっている。
その後も――
「やっぱり朝はグビグビ青汁!」飲み物が変わっている。
「飲めばどんな病気も治る! グビグビコーヒー!」誇大広告である。
「やっぱり朝からコーヒーは胃もたれすると思う」個人的感想。
こんな具合にNGを出しまくり、ようやく――
「やっぱり朝はグビグビコーヒー!」
完璧なCMを撮影できた。
責任者が礼を述べる。
「最高のCMができました! しかし……お腹は大丈夫ですか?」
「ええ、なんとか」
すっかりコーヒーが溜まった腹を抱え、吾郎はマネージャーと次の現場に向かった。
その途中、マネージャーが心配そうに尋ねる。
「溝口さん、お体は平気ですか?」
「ああ……全て予定通りだ」ニヤリと笑う吾郎。
「え?」
午後になりドラマの撮影が始まる。
「お前は事件が起こると熱中しすぎて眠らずに事件を捜査するという名探偵テツヤ!?」
「フフフ、この難事件……俺を徹夜させてくれそうだぜ!」
探偵役である吾郎の熱演に監督が感動する。
「すごい! 事件に興奮して目がギンギンになった探偵を見事に演じている! 完璧な役作りだ!」
マネージャーは感心した。
「なるほど、このためにNGを出してコーヒーを何本も……やはりあなたは素晴らしい俳優ですね」
完
なろうラジオ大賞参加作品です。
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