四話
城塞都市カラミリア
カラミリアの門に行くとハスウェルが待っていた。
「あらあなた何してるの?」
今日は薬草集めをするため一人で宿から出て来たユリアはハスウェルがいたのを見て首を傾げる。
「君の護衛だ」
「はっなんで?」
「教会からの依頼だ」
そう言って書状をユリアに見せて来た。そこには確かにハスウェルにユリアの護衛に着くように書いてある。
「あーんた、手ぇ回したな?」
「何の事だ?、正式な依頼だが?」
「本当かしらねぇ?」
ユリアは金色の髪を揺らしながら歩き始める。ハスウェルは着いて行く。
「マジで来んの?」
「これが今日からの俺の任務だ、君が行くところには俺も行く」
「ええー」
「それに君も聖女見習いと言った時点で教会の人間だろ?、この決定に文句は言えない筈だが?」
そう言われると…とユリアは思う。聖女見習いに認定された時点でユリアは教会の職員である。職員証も数年前に貰っており今は…。
「やっばい!」
ここでユリアはとある事に気付いた。
「教会の職員証、家だ!、ヤバイヤバイ!、折角真面目に祈り捧げたりしようと思ってるのに!!」
教会の職員証がなければもし確認されたら二度と教会の祈りの間には入れなくなる。そのため教会の職員証は絶対に持っていないといけない。
「教会に入れなくなるな、聖女としてかなりまずいのでは?」
「家に取りに行く!」
「追い出されたのに渡してくれるか?」
「分かんないけど!」
ユリアは急いで教会の職員証を取りに行く。
「渡してくれたわ…」
「早かったな…」
追い出した割にこんな早く渡してくれるのか?とユリアは思う。
「何かおかしくないか?、追い出した相手に必要なものを渡すのか?」
「それは思ったけど、私はもうこの家に戻る気はないしどうでも良いわよそんなの」
ユリアはそう言うと買った鞄に職員証を入れる。
「そう言うところも君らしいな、俺なら気になって仕方ないが」
「うっさい、私が良いって言ってるから良いの、それよりも仕事に行くわよ、着いて来るなら役立ちなさいよ?、護衛クン?」
そう言ってユリアはハスウェルにウインクする。それを見たハスウェルは頬が赤く染まるのを自覚する。
カラミリア平原
カラミリア平原にユリアはハスウェルと共にいた。
「それで今日は何を狩るんだ?」
「リザードマンよ、川辺で人襲って迷惑かけてるんだって」
「君、勝てるのか?、その剣で」
「私の剣は私の魔力でカッチカチよ!」
だから問題なし!とユリアはVサインする。
「そんなに硬質化するのか?君の魔力で」
「聖女の魔力舐めんな」
そう言ってユリアはそこら辺の枝を拾って魔力を流すとハスウェルに渡した。
「…」
枝など折れるだろうと思った。しかし鍛え上げたハスウェルの腕力でも折れなかった。
「嘘だろ…」
「フハハ」
ユリアはハスウェルでは枝を折る事が出来なかったのを見てドヤ顔を見せる。
「その顔を見ていたらいつかこれを折れるくらいの筋力を付けたくなったよ…」
「頑張れー」
ユリアはハスウェルの方をバンバン叩きながらリザードマンの所に行く。
川辺
「こら待てー!」
ユリアはリザードマンを追いかけている。ハスウェルも一緒だ。
「このっ!!何と逃げ足の速い!」
「速すぎるな!」
驚くべき速さで逃げるリザードマン。ユリアの剣がいくら普通の剣を超えた強度と斬れ味だったとしても追い付けなければ意味がない。
「ユリア!君の魔法で捕まえてくれ!」
「分かったぁ!」
ユリアは折角剣を買ったのにと口を尖らせつつ魔法でリザードマンを拘束する。そしてハスウェルが先に斬り伏せ。ユリアが続いて斬り伏せた。
「凄いな、うちの家がかなりの金額をかけて作った剣と同等の斬れ味か…」
「どうだ見たか!これが私の魔力だ!」
「単純に凄いよ」
ハスウェルはユリアの力を見て思う。だからこそ教会は軍に護衛を付けろと言って来たのだと。自分が好いている少女を失えば世界にとっての損失となるのだ。
「なぁによ?ハスウェル、私の顔ジッと見てさ?、戦いに集中しろ?」
「いや、君は改めて聖女なのだなと実感したのさ」
「何だ貴様、普段の私も十分聖女らしいでしょうが?」
「どこがだ」
ハスウェルの言葉を聞いたユリアは全力で彼の脇腹に蹴りを当てた。それを見たリザードマン達は同情したのか転けたのに彼を襲わない。
「いやそこは襲えよ、お前らそれでも魔物か?」
「君はそれでも聖女か…」
「まだ見習いでーす」
そう言ってユリアは次々とリザードマンを斬り伏せ依頼をチーンと言う気持ち良い音と共に完遂させる。
「はい終わり、帰るよー、ハスウェル」
「あぁ」
ゴールドゴールドらんらんらんーと歌いながら街に戻る少女の背中を見てハスウェルは立ち上がりながら思う。あのような気ままなところも好きなのだと。
(だからこそ、この依頼は俺向けだ、教会には感謝しないとな)
そう思いながらハスウェルはユリアに追い付くため駆け出した。