二話、襲撃
城塞都市カラミリア
ユリアはご機嫌な様子でカラミリアの商業区を歩いている。
「剣を買うんだよね?、足りる?」
「お金がないから安いのを買うわ、まぁ足りるでしょ」
「大丈夫かなぁ…」
質の悪い感を持つくらいなら自分がお金を出した方がとアルスは思う。武器は大事なのを知っているのだ。
「あなたお金を出そうとか考えてるでしょ?」
するとユリアは振り返りアルスの鼻先に指を当てる。
「う、うん…」
「私は聖女よ、光の力で物体を強化出来る、だからね?私なら安い剣でも十分に武器になるのよ、だから心配しなくて良い」
ユリアはアルスの鼻先から指を離すと柔らかく微笑む。
「お金を出そうとしてくれたその気持ちだけ貰っておくわ」
「分かった、勝手な事しようとしてごめんね?ユリア」
「ふふっ良いよ」
二人は話を終えると武器屋に入る。
武器屋
「はいいらっしゃい」
武器屋に入ると黒人のおっさんがいた。
「見てよ、アルス、すっごい武器に詳しそうじゃない?」
「だね」
ユリアはおじさんに近付くと話しかけた。
「あのね?私武器が欲しいの、予算は10000ゴールドなんだけど…」
「それだけあるなら初心者には勿体ないくらいの物が買えるな、こっちだ」
そう言っておじさんが案内してくれたのは鉄の剣のコーナー。丁度10000ゴールドの剣が売っている。
「持ってみな」
「ええ」
おじさんから剣を渡されたユリアは鞘から引き抜くと振るう。
「ほほう…」
(どう見てもどこかの家のご令嬢だがしっかりと振れている、この子なら剣を売っても問題はないな)
「どうする?買うか?」
「買う!」
「良し来た、固定用のベルトはオマケで付けてやんよ!」
そう言っておじさんは店の裏からベルトを持って来てくれたユリアは嬉しそうに腰にベルトを付け剣をそこに刺す。
「見違えたねユリア、それだけで立派な剣士に見えるよ」
「うふふー、中々でしょ?私」
アルスの言葉を聞いたユリアはふふん?と胸を張る。
「お嬢ちゃん、金ないんだろ?」
「うっ…」
おじさんの言葉を聞いたユリアはふふんと胸を張るのをやめて肩を落とした。
「ここに来たら無料で剣を見てやるよ」
「ホント!?、…でもなんで?」
剣の整備にもお金が掛かるのでは?とユリアは言いたげだ。
「子供は気にすんな!」
「ええー何それー」
バンバン!とユリアの背中を叩くおじさん。ユリアは楽しげに笑う。
「出て来たらやるぞ」
「あぁ」
城塞都市カラミリア
店から出るとユリアは視線を感じる。
「…」
ユリアは買ったばかりの剣を握った。
「どうしたんだい?」
「来る…、アルス!下がって!」
聖女としての感が教えてくれていた。これは殺気だと。ユリアは剣を引き抜くと襲いかかって来た二人のうち一人の剣を弾き飛ばす。
「なっ!?ただのガキじゃねーのかよ!?」
もう一人は腕を押さえて痛がる相方を見て警戒する。それが命取りだった。
「止まるなんてね!」
ユリアは彼の足元から光の柱を発生させもう一人を打ち上げた。落ちて来た彼は地面に激突して意識を失う。
「…」
(この通り、ユリアは本来出来る子なんだ、婚約が決まって舞い上がってただけで)
アルスはユリアが実力を発揮したのを見てうんうんと頷く。
「さてお兄さん、私に何の用かしら?」
「チッ!!」
ユリアが剣を向けると男はもう一人の首にダガーを突き刺し自分にも刺して自殺した。
「はっ…?」
ユリアはその光景を見て凍り付く。まさか目の前で自殺をさせるとは思ってなかったのだ。
「ちょっ!、このバカ!、何やってんのよ!!」
ユリアはそれを見て聖なる光を全力で解放する。その光は二人を包み込み致命傷であるはずなのにあっという間に治してしまった。
「嘘だろ…?」
死ぬはずの傷を治してみせたユリアを見て見ていた者たちはただただ驚く。
「はぁはぁ…」
光を放っていたユリアはフッと意識を失う。それを見たアルスは慌てて少女の体を受け止めた。
「何事だ!!」
そこに兵達が駆け付ける。
「この二人が襲って来たんだ」
「そうだ、その二人は襲って来た二人と戦っただけだよ」
周りにいた者達はユリアとアルスは悪くないと庇ってくれた。
「なるほどな、おいこの二人を連れて行け、君達二人も一緒に来るんだ、その子は気絶している、放ってはおけん」
「ありがとうございます」
隊長は部下の一人にユリアを運ぶように言う。それに頷いた兵はユリアを優しく抱き上げ運び始めた。
「それにしても大人二人によく頑張ったな、偉いぞ」
隊長はアルスの髪を撫でる。
「戦ったのはユリアですよ、僕は何もしてません」
「ははは、謙遜するな、この子が思いっきり戦えたのは君がいたからさ」
隊長はそう言うとアルスの肩を叩く。隊長の言葉を聞いたアルスは自分でもユリアの役に立てたのだなと嬉しく思った。