一話、魔導機装
宿
追い出された日の翌日ユリアは宿で目を覚ました。
「ん…そっか、私昨日追い出されたのね…」
そう思うと悲しくなるが。ユリアは泣かない!と己を奮い立たせてベッドから降りると一階に降りた。
「ユリア!」
そこにはアルスがいた。ユリアの幼馴染のフッソカルド家の少年である。
「アルス、あなたなんでここに?」
「君がここに入ったって聞いてね、心配して様子を見に来たんだ」
ユリアはここで彼が心配して様子を見に来てくれたのだと知る。
「ありがとう、心配してくれて」
ユリアは彼の手を取ると微笑んだ。
「良いさ、幼馴染だろ?、それとさ僕も家を出る事にしたんだ」
そう言ってアルスは弓をユリアに見せた。
「ええっ!?、なんで?」
「僕も冒険者やってみたいと思ってたんだよ」
アルスは頬を赤くして家を出た理由を話す。
「そ、そう?」
「そうなんだよ」
(本当かしら…)
ユリアは本当か?と思いつつもアルスなら家を出ても許されるだろうなと思う。何故なら彼はフッソカルド家の次男だ。その時点で家を継ぐ事はないためユリアに着いて行くと言っても頑張れと送り出されるだけなのである。
「と言うわけでここに来る前に冒険者登録もして来たからよろしくね、ユリア」
「よ、よろしく」
私なんかに着いて来て良いのか?と思いつつユリアは彼を仲間にした。
暫くして朝食を食べ終わるとユリアはアルスと共に冒険者カードを使って依頼を見ている。
「沢山あるでしょ?迷っちゃうわ」
「そうだね…これは迷うね…」
幼馴染と言う事もありユリアとアルスの距離感は近い。ユリアが成長して魅力的な女性になりつつあるため年頃なアルスはついつい意識してしまう。
「…?どうかした?」
ユリアはアルスに向けて首を傾げる。
「な、なんでもないよ、それよりも依頼は決まったかい?」
「ゴブリン狩りに行きましょ」
「理由は?」
「お金が沢山手に入るからよ!」
ユリアはそう言うとポケットの中を見せる。そこには少しのゴールドしか入ってなかった。
「うーん貧乏…」
「でしょ!、バンバン依頼を受けて稼がないと私は死ぬわ!」
「よ、良し頑張ろー…」
アルスは言えなかった。旅の資金を貰って来ている事を。それを見せたらやる気になっているユリアはお金あるじゃんとやる気をなくしてしまうかもしれないからだ。
「ほら!行くわよ!、ゴブリン狩りよー!」
「おー!」
二人は宿を出ると平原に出る。
幼馴染二人で仲良く平原を歩いているとズン!ズン!と後方から音がした。
「見てよユリア、魔導機装だ!」
「わぁ!、大きいわね!」
魔導機装とは魔導技術で作り上げられた巨大なロボットだ。とても高価であり配備されているのは軍かお金持ちの貴族の家かだ。
「僕いつかあれが欲しいんだよね」
「あなたああ言うの好きよねぇ、私の部屋にカタログいつも置き忘れて行くから溜まっちゃってたわ」
「あはは…悪い…」
置き忘れるのはユリアにも興味を持って欲しいからである。魔導機装の良さを理解して欲しいのだ。
「ちなみに私の目的は成り上がりだけど、あんな高いの買う気ないわよ」
「ええー!」
「あっやっぱり私にそのうち買わせる気だったのね」
ユリアは口をあんぐり開けている少年の脇をツンツン!と突きまくる。するとアルスは笑い始めた。
「ゆ、ユリアのそれ本当に効くからやめてー!」
「やめないわ!、とぉ!」
歩きながら騒いでいると何やら視線を感じる。
「あら噂のゴブリンね」
あっちから来てくれたわとユリアは棒を構える。
「それ武器なのかい?」
「悪い?お金ないのよ!」
「すまない…」
「良いわよ!許してあげる!、さぁてゴブリン君達!、私の相手してもらうからね!」
ユリアは駆け出し金色の髪を揺らしながらゴブリンに迫ると棒を振り下ろした。コン!と木の良い音が響いた後ゴブリンは倒れていた。聖女の光の魔法が込められた棒は立派な鈍器である。とても良く効くのだ。
「オラオラ!」
「ユリア、口が悪いよ!」
アルスもユリアの援護をして次々とゴブリンを撃ち抜いて行く。幼馴染である事もあり連携が取れており。新人冒険者二人とは思えない強さを発揮している。
「ギェェ!!」
ゴブリンはそれでも二人を食べるために攻撃を仕掛けてくる。
「準備完了!、喰らいなさいな!」
しかしユリアは魔法の準備をしており。腕を開くのと同時に光の柱が立ち上がり残っていたゴブリン全てを柱は貫いた。
「はっはっは!、見たかしら!、これが私の力よ!」
「相変わらず、派手だね君は…」
ユリアの派手派手な攻撃にアルスが呆れているとチーンと気持ちの良い音が鳴る。討伐完了だ。
城塞都市カラミリア
「お疲れ様」
「お疲れ」
今日の分の報酬を貰ったユリアはホクホク顔をしている。必要数以上のゴブリンを光の柱が巻き込んでいたため15000ゴールドも稼げたのだ。これで明日には剣を買えるだろう。
「これだけあれば買えるね、ユリア」
「この子ともうお別れかぁ…」
ユリアは二回分の仕事保ってくれた棒を撫でる。
「これ捨てれないかも私」
「愛着が湧いちゃった?、気持ちは分かるよ!」
「あなたの変なコレクションと同じにしないでくれるかしら?」
ユリアは彼の部屋にある魔導機装の模型を思い出して言う。
「ええー…同じだよ」
同じだと思うとアルスは呟いた。
「違うから!、絶対違うから!」
「ええー」
アルスは粘る。ユリアはそんな彼からプイッ!と顔を逸らすと走り始める。
「待ってよ!ユリア!」
アルスはそんな彼女を走って追いかけ始めた。
「見つけたぞ、例のガキだ」
「良し、殺すぞ」
そんな二人を二人の男が追い始めた。