表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/66

55.近づく人影

リコの心の拠り所は、両手の温もりだけだった。

手を繋いでいる間は、ゼドも……ついでにロッテも、いなくならない。


そう信じて、リコは明るくなるのを待った。


シュッ、と誰かがマッチを擦ったかと思うと、ぼんやり辺りが明るくなった。


「大丈夫か?」


はじめに見えたのはオリヴァーだった。暗い中顔だけが明かりに照らされて、生首が浮いているようだ。


「大丈夫です。……覚悟しててもびっくりしましたね」


オリヴァーにレイナが答える。


「全く、面倒な能力だな」


ため息混じりにゼドが呟いた。リコは低く耳をくすぐるようなその声で、彼が消えていないことを確信し、胸を撫で下ろす。


「点灯ー!」


少し離れたところでロッテが叫んだ。

再びランプに一つずつ、光が灯っていく。


そしてフィールドの全貌が明らかになっていくにつれ、さっきまでの穏やかな気持ちから一変して、リコは愕然とした。


いない……誰もいない。

ゼド、自分のパーティメンバー、そしてロッテ以外、全員が消えていたのだ。


だだっ広いフィールドには、ポツンと5人だけが散らばり、その真ん中にセイレーンの水槽があった。


水槽から顔を出したセイレーンは、得意げに頬杖をついて微笑んでいる。


「どうだ、リコ。何か変わったことはあったか?」


ゼドが尋ねてきた。

何か、どころではない。


「き、気づかないんですか?」

「あぁ。暗くなる前と何も変わっていない……と俺は思う」


リコがどこから説明しようか迷っていると、ふぁあ……と、ダンジョンの更に奥へと続く道から欠伸が聞こえていた。


「お前!? どこへ行ってたんだ?」


オリヴァーが呆れたような声をあげる。


誰だ?

なぜかリコの心音は大きくなり、嫌な予感がした。


欠伸の聞こえたオリヴァーの振り返る方へ、リコは視線を向ける。


瞬間、膝から崩れ落ちた。


「リコさん!?」


駆け寄るレイナに支えられて、リコは何とか意識を保った。


レイナが心配そうに覗き込んでくる。


「あ、あれ……なんで……」


リコは震える指で目の端に映る人影をさした。

その人は馬鹿にしたようにリコを鼻で笑い、近づいてきた。


「どうしたんだよ、リコ。幽霊でも見たような顔してさ」


ニヤけ面でリコの目の前まできたのは、紛れもなくトーリスだった。

生首だけになった、かつての仲間の……。


「あ、あ……あ……」


リコはまともに息ができなくなり、レイナの腕の中で気を失った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ