表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/66

54.握った手

「ふざけているわけじゃないよな?」

「あ、当たり前です!」


ゼドは指で顎に触れ、少し考えたあと、長いため息を吐いた。


「多分、お前の言うことは正しい」

「信じてくれるんですか!?」

「あぁ。お前を、というか……」


リコのほうへと、ゼドは指を伸ばした。

長年武器を作った功績で、その指は無骨で荒れている。しかし何故か甘い匂いがして、リコの体は緊張した。

シャラン、と胸元で鎖が鳴る。


「真実の首飾り」

「あぁ、そういえば言ってましたね。……ってことは、私以外全員がモンスターに惑わされているということですか?」

「おそらく」


リコは体から血の気が引いていくのを感じた。いっそのこと、真実なんて知りたくなかった……私ではなく、ゼドがアクセサリーをつけていればよかったのに。


ゼドの後ろで水槽のセイレーンは、また苛立たしげに水の中を旋回していた。


「さっき真っ暗になった後、人が減ったんです! 次また同じことがあれば、もっと減ってしまうかも……」

「その可能性もあるな」

「引き上げましょう!」

「簡単に言うな。もうセイレーンの鱗は8割以上色が変わっているんだ。今日を逃せばいつ鱗が手に入るかわからない……大勢の人間が病に苦しむことになるんだぞ」

「でも! ゼドさんになにかあったら元も子もないじゃないですかっ」


リコの声に周りで休んでいたパーティメンバーが振り返った。

自分よりもゼドを心配してしまったことを恥ずかしく思うと、リコは視線から逃れるように俯いた。


誰かがリコの横腹を肘で突く。


「リコさんったら〜隅に置けませんねぇ」


ニヤニヤしていたのはロッテだった。

リコは一瞬、彼女を本気で殴ってやろうかと思った。


ゼドが小さく咳払いをする。


「とにかく、いきなり切り上げることはできない。しかしできる限り自衛はしないとな」


セイレーンはガンガン水槽にぶつかり、また今にもまた不気味な雄叫びを上げそうだ。


「おーい、皆、聞いてくれー!」


ゼドが声を上げると、雑談の声がシン、と収まった。


「おそらく、また灯りが落ちる。離れないように隣人と手を繋いでくれ」


指示を送りながらゼドはリコの手を握った。

温もりと柔らかさに、不覚にもリコはドキッとしてしまう。


「アーーーーーーー!!!」


セイレーンが叫んだ。


空いていた手にも力がこもる。


「リコさん、私もいますよ」


隣にはぴったりとくっついた、笑顔のロッテがいた。

空気読め、と言いかけた瞬間、辺りは真っ暗になって何も見えなくなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ