51.弓矢の彼女
「最後、ロッテ」
「はいはいはーい!」
憎たらしいほど元気に、ロッテは返事をする。
「なんだ。全員いるじゃないか。人騒がせだな」
ゼドはリコを横目で見ると、大きくため息をついた。
そんなはずはない。
リコはもう一度辺りを見渡してみた。
ゼドが点呼を取るのに合わせ、パーティごとに人が集まると余計に、スカスカになった空間が目立った。
「すみません。勘違いでした」
しかし誰がいなくなったのか、はっきり答えられない以上、リコはゼドへ頭を下げる他なかった。
「まぁ、いい。また何か気になったことがあったら、報告しろ」
ゼドは一度リコの胸元のアクセサリーに目をやってから、ふいっと背を向けてセイレーンの水槽へ戻っていった。
ただの勘違いなのか……?
つまらないことを言ってゼドを失望させただろうかと思うと、リコの胸は重く沈んだ。
ぽん、と誰かが、リコの肩を叩く。
「わかりますよ。リコさんの気持ち」
振り返ると、ロッテがいた。
「あの、今本当疲れてるんで、後でもいいですか?」
リコは肩に置かれた手を振り解きながら、できるだけダンジョンの隅で休もうと歩みを進めた。
しかしロッテはすぐさまリコの正面へ先回りすると、容赦なく行手を阻むのだった。
「待って待って! あたし、リコさんの言うことわかるのっ」
「え?」
「人、減ってるよね。あたしも気づいた!」
キリッ、とした表情ではっきり言い切るロッテを、リコは睨んだ。
「適当なこと言ってません?」
「言ってませんて! 現に、副リーダーいなくなってますし」
「副リーダー?」
「ほら、さっき話に来た、弓矢の女の人です」
「えっ!?」
改めてリコは辺りを見てみた。
確かにいない。
ロッテを心配して母親のように世話を焼いていた、背の高い弓矢使いの女性……。
「ロッテさん、今すぐ報告しましょう!」
「……無駄ですよ」
「な、なんでですか!?」
「仲間も誰も彼女のこと覚えてないんです。さっきの点呼でも名前呼ばれてなかったでしょ?」
「はぁ。まぁ」
「あたしですら、ぼんやりとしか思い出せないですもん。仲間だったはずなのに、名前すらわかりません」
「えぇ?」
「あたしたち以外、この異常事態に気がついているのはいないようです。2人でなんとかしないと!」
それならいっそのこと、私一人が違和感に気がついていればよかったのに、とリコは思った。
リコが終わりの見えそうにない不安を抱えた最中、またセイレーンは声高く歌いはじめた。




