44.愛の首飾り?
差し出された首飾りを、リコは恐る恐る手に取ってみた。
ゼドが作ったことを証明する刻印が、しっかりと刻まれている。
「アクセサリー始めたんですか?」
「取り敢えず、つけてみろって」
ゼドに言われるがまま、リコはアクセサリーを首にかけた。
体が前のめりになり、よろけてしまう。
「重……。人が作ったものには機能性を考えろ、とか散々言うくせに」
ぶつぶつ文句を言いながらも、リコはゼドからのプレゼントを嬉しく思った。
アクセサリーを渡すってことは、プロポーズ? いやまさか、それはないか。
違うと自分に言い聞かせても、リコはほんの少し期待してしまうのだった。
「似合ってるじゃないか」
「あ、ありがとうございます」
「それ、ダンジョン出るまで外せないからな」
「え?」
試しにリコは首飾りを持ち上げようとした、
……肌に鎖がピッタリくっついている。
「どうなってんですか、これ!? 呪われたアクセサリーですか!?」
「人聞きの悪いことを言うな。これはお前を守ってくれるんだぞ」
「私を、守る?」
「あぁ。付けているだけで、モンスターに惑わされなくなる。ヒトガタは幻覚を見せるモンスターもいるんだろう? ちょうどいいと思ってな」
「どうしてそれを私に?」
お前が一番大切だからだよ、リコ。
そんな言葉を待ち、リコは尋ねてみる。
しかしゼドは表情ひとつ変えずに答えた。
「お前は実験台だ」
「……は? じ、実験台?」
「アクセサリー作りにも製作の場を広げようと思ってな。この『真実の首飾り』は、試作品第一号だ。商売に値する物なのかは実際使ってみないとわからないだろう」
「あぁ、はぁ……」
「性能を確かめてくれ、我が弟子よ」
結局はゼドにとって私は、弟子以下でも以上でもない。
そのことがはっきりと分かり、更には首飾りの重みで、リコはがっくり肩を落とした。
「そろそろ時間だな」
懐中時計を見ながらゼドが呟いた。
ゼドが声をかけるよりも早く、いつのまにか辺りは静まり返っていた。
「それじゃ、始めるぞ」
いよいよ始まる。
モンスターを引き寄せるセイレーンの力とは、どれほどのものなのだろうか。
リコが姿勢を正すと、身体にくっついているはずの鎖がシャリ、と音を立てた。
ゼドが布を引く。
相変わらず水槽の中のセイレーンは目をひん剥き、ギリギリと歯を噛み締めた酷い形相だ。
しかしふとセイレーンはあたりを見渡すと、突然水面から顔を上げた。
徐々に表情が緩んでいく。
そこにはびしょ濡れだが、世にも美しい少女の顔があった。
〜〜〜♪
セイレーンは薄く笑みを浮かべ、ピンクに色づいた唇を開くと、透き通った声で聴いたことのない歌を歌いはじめた。