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43.明かされるクエスト

小柄なリコですら腰を屈めなければ、通れない道を抜けた後、街の教会のチャペルよりも広そうな空間にたどり着いた。


しかし人数が多いせいか、全員がそこに集まるころには、狭苦しくなっていた。


「クエストは事前に伝えたとおり、セイレーンの鱗の収集に協力してもらう。セイレーンはダンジョン内でモンスターと接触することで、鱗の色が変わると知られている。鱗が変色してからその一部を採取し、クエスト完了とする。あまり知られていないが、セイレーンの鱗は流行病の特効薬になるんだ。今とある街で多くの人間が、その病で苦しんでいるそうで……といっても俺はそこまで詳しくないんだけどな。本当は薬屋が来るところの、代理で来ただけだし」


ゼドはクエスト紙を片手に、言葉を途切らせながら説明を続けた。ぎこちない話術は、ほとんど人前で話したことが丸わかりだと、リコは思わず笑ってしまいそうになる。


肩震わせるリコを見て、ゼドは鋭く目を細めた。


「それで、えぇと、少し話が脱線したが、何に協力してほしいかというと……セイレーンはそこにいるだけで、モンスターを引き寄せすぎてしまうんだ。だから集まってきたモンスターを倒して欲しい、といってもある程度集まっていないと、鱗が変色しないんだが……まぁ、その辺の調整はまた指示する」


早々にゼドは話を切り上げると、くしゃり、と手の中でクエスト紙を丸めてポケットにしまった。


「あの、質問いいですか?」


ひとりの若い剣士が、キリッとした眉を引き締めて手を挙げた。

ゼドは一瞬固まっていたが、少しして、あぁ、俺に聞いているのかと、目を瞬いた。


「何だ?」

「セイレーンに集まってくるのは、特定のモンスターなのでしょうか」

「お、いい質問だな。そう。集まってくるのは特定のモンスターだ。セイレーンは自分と同じ、ヒトガタのモンスターを引き寄せると聞いている。このダンジョンはヒトガタが多いんだよな?」

「はい。8割のモンスターはヒトガタですね」

「なるほど」


質問をした剣士は顎に触って少し考え込んだ後、後ろの仲間と何やら相談しだした。

仲間たちが頷いてから、また剣士はゼドへ向き直ったのだった。


「ヒトガタ用に装備を整えたいのですが、構いませんか? 10分ほど頂ければ完了します」

「あぁ、わかった。それじゃ、今から10分後にセイレーンを解放するか……。時間がかかりそうなパーティがあれば、遠慮なく言ってくれ」


はい、はーい、とまばらな返事が聞こえた後、パーティは各々準備を始めた。

常に同じダンジョンでのクエストで、装備を変えるも何もないリコは、ぼんやり魔導書を眺めた。

オリヴァーとレイナも、暇を持て余しているようだ。


「リコ」


突然ゼドから声をかけられ、リコは本から顔を上げた。

ゼドはゴテゴテの装飾が施された、首飾りを片手にしていた。


「これ、お前にやるよ」


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