37、解散の危機
「何を言ってるんですか、オリヴァーさん! 私そんなの納得できません!」
バンッ! とレイナは強くテーブルを叩き立ち上がった。
視線を背中でひしひしと感じたが、リコはテーブルの上で波打つ水をじっと見ていた。
「お前の実力なら、すぐに別のパーティから声がかかるだろう。……あぁ、知り合いのパーティに俺から掛け合ってもいい。次のパーティに入るまでの生活も保証する。だからリコも心配するな」
「そういう問題じゃなくて!」
レイナがオリヴァーの説得を試みている隣で、リコはさっさと解散すればいいのにと思っていた。
生活まで保証してくれるのなら、言うことなしだ。絶対にパワハラの無いパーティが見つかるまで、ダラダラ顔合わせを続ければいい。
これを機に闇魔法使いを引退して、別の安全な仕事に就くのもアリかもしれない。
致死率0パーセントでもない上に、パワハラされるのなら、さっさとパーティを抜けたいというのがリコの本音だった。
「ただ、解散をする前にひとつ、頼みがある」
オリヴァーはレイナとリコへ、交互に真っ直ぐ視線を向けた。
「実はもう次のクエストを受けていたんだ。だから最後の仕事だけは、このパーティで全うしたいと思っている。強要はしないが……」
「最後なんて、言わないでくださいよ」
レイナは声を震わせている。もしかすると泣いているのかもしれなかったが、リコは見上げることができなかった。
レイナのことよりも、どのタイミングでパーティを抜けるか、頭の中はそればかりだ。
もう自分とは関係無いと思いつつも、リコはぼんやりクエストが書かれた紙に目を通した。
瞬間。
「えええええっ!?」
リコは叫んでいた。
「ど、どうした?」
オリヴァーもレイナも、ポカンとしている。
「あ、あの、これ、依頼主」
「依頼主?」
リコはパクパク口を動かしながら、依頼主の欄を指さした。
そこには「武器屋 ゼド」と書かれていた。




