31、リコのひらめき
ダンジョンを出る頃には、リコもレイナも全力疾走で疲労困ぱいだった。オリヴァーはふたりのただならぬ様子に、剣を抜いて駆け寄ってきた。
「何かあったのか!?」
「何かというか、事故というか」
「事故!?」
息切れして倒れそうなリコの代わりに、レイナはダンジョンの中で起こったことをオリヴァーへ伝えた。
休んでいる間にいくらか回復していたようなオリヴァーだったが、話を聞くうちに顔から血の気が失せていった。
「大変だ。すぐに向かわないと。案内してくれ」
オリヴァーは今にも倒れそうになりながら、壁に手をつきダンジョンを進んだ。
「お、応援を呼んだ方がいいんじゃないですか」
「いや、そんなの待っていられない。怪我をしているんだろ。早く助けないと。トーリス。トーリス、待っててくれ」
オリヴァーはブツブツ小さく呟きながら、レイナとリコを置いてどんどん前へ向かおうとした。
その姿はまるで何かに操られているようだ。
「オリヴァーさん。こっちです!」
レイナに声をかけられて、ようやくオリヴァーは立ち止まった。
まだ少ししか歩いていないのに、オリヴァーは顔から体にかけて、着ている服が変色するほどぐっしょり汗で濡れている。
少し歩いたところで、ふたりが走り抜けた狭い通路を見つけた。初めにトーリスのイビキを聞いて、訪れたときよりもずっと早い到着だった。
オリヴァーを先頭に、急いで奥へと向かう。
「あ、あの、魔法切れちゃってると思うんで、気をつけて!」
一番後方からリコは声をかけたが、オリヴァーは振り返らなかった。
大岩のある開けた空間は、静まりかえっている。
「トーリス!」
オリヴァーの声が虚しく響いた。
地面には大量の血痕と、さっきリコが魔法で出した泥が乾いているだけで、トーリスはどこにもいない。
「本当にここなのか!?」
「間違い無いです! よね、リコさん」
「は、はい! この血も間違い無くトーリスさんのです」
「魔法を振り切って、どこかへしまったんですかね」
「そんな……どこかへ、って……」
オリヴァーはその場に膝をつき、拳で地面を殴りつけた。
その気迫に、リコは小さく叫ぶ。
「探すぞ。まだそう遠くには行っていないはずだ」
オリヴァーはスッ、と立ち上がるとまた、フラフラ歩き出した。
「オリヴァーさん! ボクたちだけではどうしようもありません! 一度ここから出て、助けてもらいましょう」
「酷い怪我なんだろう!? 血を流したままで! モンスターに遭遇してしまうかもしれない。間に合わなかったどうするんだ!」
「でも、手がかりも無いのにたった3人で、また初めから探すんですか?」
言い合う2人の隣で、妙に冷静になっていたリコは、あることに気がついた。
トーリスを見つける方法、あるじゃないか。
「こ、これですっ! これを辿りましょう!」
リコは既に酸化し、赤黒く変わりつつある血痕を指さした。




