27、ゼドとの決別
「リコさん?」
「は、はいっ!」
レイナに覗き込まれて、リコは直立小ジャンプした。
「ぼーっとしてますけど、も、もしかして、リコさんもノアさんに一目惚れしちゃったとか?」
「あ、ないです」
「即答! それも複雑かも」
冷静に応えるリコを見て、レイナは苦笑する。
「でも良かった、リコさんがライバルじゃなくて。リコさん可愛いですもん」
可愛い……。
初めて身内以外から投げかけられたその言葉に、リコは戸惑った。
レイナは本気で言っているのだろうか。お世辞だろうか。嫌味……を言うような子ではないな。
何とも答えられず、リコは口をパクパクさせた。
「もしかしてリコさんも、好きな人が居るんですか?」
「ひぅっ!?」
答えられそうにないリコを見兼ねたのか、レイナは別の話題を振ったが、それはそれでリコは酷く動揺した。
ニセモモに言われて、ゼドを意識したことを思い出したのだ。
「あ、あの、無理に言わなくてもいいですけど」
「好き……というか、気になる人なら」
「本当ですか!? もしかして、ゼドさん?」
なぜレイナがゼドの名前を? と考えて、前にニーアと話していたことをリコは思い出した。
話していたといっても、レイナにとってはリコがブツブツ独りで話しているだけに見えていたのだが。
「まぁ、はい。そんなところ……です」
「いいですねぇ。武器職人さんなんでしたっけ? 今でも連絡取り合ってるんですか?」
「いいえ、合わせる顔ないんで」
レイナは大きな目をさらに見開いて、ショックを受けたような表情をした。
「そんな。好きなのに会えないなんて、悲しすぎます! 何か事情があるんですか!?」
「い、いや、そんな大したことじゃないんですよ。ちょっとした喧嘩っていうか」
「喧嘩?」
「私も武器職人になりたくて師匠……ゼドのもとで働いてたんです。基本的には私は雑用で、でも時々作った武器を見てもらってって感じで。……ゼドは本当に厳しくて、私の作った武器にことごとくダメ出ししました。重いだとか、装飾がゴテゴテすぎる、だとか。挙句の果てには、お前は実績がないから武器を使う人間の気持ちがわからないんだって」
「実績?」
「パーティを組んで、クエストに挑んだ実績です。……そもそも命懸けで戦うのが嫌だなって思って、私は武器職人目指したんですけど……師匠だってほとんどダンジョンに行ったことないはずなのに、そんな風に言われたのが悔しくて。だから私、それならここを出てパーティに入る! って師匠に言い捨てて、全部投げ出してきたんです」
レイナは歩きながら、静かに頷いている。
「だから合わせる顔なくて……師匠もきっと、私みたいな中途半端な弟子になんて会いたくないかなって……」
「そんなことないですよ、リコさん」