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16、空元気

リコが声をかけるとレイナは振り返り、パァッと明るく笑った。


「リコさん!」


レイナの足首に巻かれた包帯が痛々しく、リコはそっと目を逸らすとぎこちない笑みを浮かべた。


「リコさん、筋トレしてたんですか?」

「まぁ……そんなところです」

「えー! お休みなのに、エラいですね!」


年下の子に「エラい」と言われるのも複雑だったが、リコは悪い気はしなかった。


「レイナさんは今から出かけるんですか?」

「はい、回収所にちょっと用事です」


レイナは縦長の大きな封筒を顔の横に持ち上げた。封筒には宛名も何もないが、しっかりと封がされている。直接どこかへ持っていくものなのだと、一見してわかった。


「回収所?」

「私たちが回収した宝箱を、管理しているところですよ。リコさんは行ったことありませんでしたっけ」

「はぁ、無いですね」


それどころか、回収所なるところがあることすら、リコは知らなかった。

ぽかんとするリコを見て、レイナはふふっ、と笑った。


「もし良ければ、一緒に行きません?」


レイナの提案にリコは黙って頷く。


回収所がどこにあるのかも聞かないで、街を離れ、モンスターの出ない整備された高原を歩く道すがら、レイナはずっと上機嫌だった。しかしリコは理由を探ることもできず、当たり障りのない会話をだらだら続けていた。


「オリヴァーさんやトーリスさんは、休みどうしてるんでしょうね」


そしてリコは、たいして2人のことになんて興味もなかったが、唯一の共通の話題としてそこに行き着いた。


「あー……ふたりはクエストしてますよ」

「えっ!? 休みじゃ無いんですか?」

「トーリスさんがどうしても稼ぎたい! ってオリヴァーさんに直談判したらしいです。……あの人何考えてるんだか」


ふたりはクエストに出ているし、怪我をしているレイナですら用事を頼まれている。


オリヴァーは昨日、戻ってこいなんて言っていたけど、結局は私を仲間外れにして、徐々にパーティから追い出す気でいるのではないだろうか。


リコの中で新たな疑惑が生まれたのだった。


「そうだ、レイナさん。今回のこと、ありがとうございました」


リコが礼を言うと、レイナは首を傾げた。


「何のことですか?」

「いや、あの……オリヴァーさん、説得してくれたんですよね。私をパーティに残すようにって」

「あー……」


レイナは気まずそうに苦笑すると、ゆるく首を横に振った。


「説得、ってほどのことはしてないんですよ、本当に。オリヴァーさんもリコさんに厳しくしてしまったこと、後悔してましたし。ただ……その、彼は不器用なんですね。……そんなこと言う必要ないのに」


さすがのレイナもオリヴァーを弁明できないのか、弱々しく言葉を濁らせる。またレイナに気を遣わせてしまったことを申し訳なく思いながら、リコは大袈裟に笑ったのだった。


「いや、助かりましたよ! 私みたいなの、またイチから仕事を探そうと思ったって、なかなか無いでしょうし。飢え死にをま逃れました。あはは!」


リコは冗談のつもりだったのだが、レイナは血相を変えた。


「そんな、飢え死にだなんてとんでもない! リコさんほどの闇魔法の使い手、他にいないです。もっと自信を持って!」


必死に説得されるほど余計に虚しく、リコはありがとうございます、と声を絞り出すしかなかったのだった。

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