表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/66

10、待ち人

笑いながらニーアが、ぴょんぴょん跳ねるたび、腰のあたりからカチャカチャ音が聞こえてきた。ニーアのベルトには革のナイフケースが取り付けられていたのだ。


思わずリコはケースへ目を凝らした。


ケースには烙印がある。Zに2匹の蛇が絡まった、見たことのあるマークだ。

リコはまさかと思いつつも、興奮が抑えきれず、しゃがんでケースへ顔を近づけてしまった。


「にゃっ!? どうかしました!?」

「あの、これ……このナイフ、もしかしてゼドから買いました?」

「あぁ、はい! よく知ってますね!? リコさんも、ゼドブランドのファンですかにゃ?」

リコは首を横に振った。

「ファン……というより、前一緒に働いてたんで」


弟子だったとはなんとなく言いづらく、リコは誤魔化す。そもそも途中で投げ出した自分に、弟子を名乗る資格はないと思った。


「えええー! すごいですねっ。ニーアはめーっちゃファンなんで、羨ましいですっ」


苦笑を浮かべてリコはまた首を振った。堂々とファンだと言えるニーアのほうが、リコは羨ましかった。


「ゼド、どうしてます? 相変わらず無愛想ですか? 新しい従業員の人、困らせてなかったですか?」


つい矢継ぎ早に質問を投げかけてしまい、リコは慌てて口をつぐんだ。

そんなリコにニーアはまた、大きな口を開けて笑う。


「リコさん、ゼドさんのことめーっちゃ心配なんですねっ」

「へっ!? いや、そういうわけじゃ」

「でもでも、ゼドさんのお店、従業員さん、いないですよ」

「そうなんですか……? それじゃあ、ゼドひとりで?」

「はい、ニーアもそれ、気になって聞いてみたんですよ。結構お客さん来るのに、武器作りも、お掃除も全部ひとりでしてて大変じゃないのかなーって。あわよくばニーアが、お手伝いに立候補しよっかなって、思ったんですけどね。そしたらー……」


ニーアはニヤニヤと、含みのある笑い方をした。

意味がわからずにリコがきょとん、としているのをまた満足げに見つめると、ニーアは唇を開いた。


「ゼドさん、今は誰も雇わない。待ってる人がいるから……って、言ってました」


ぼっ、とニーアは全身が熱くなるのを感じた。

熱を冷まそうと、ぶんぶん首を横に振る。


「ニーアさん、からかってるでしょ」

「本当に言ってましたって! ゼドさん、リコさんのこと待ってるんですね」


ニーアから肘で脇腹を突かれても、リコは本当のことだと思えなかった。


無愛想で、無感情で、武器に関することだけは厳しくて。


そんな男から、誰かを待つ、なんて言葉が出てくるなんて到底信じられなかったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ