見たな
私はとても怖がりな女。
1人では出かけられない。
1人でいるのも嫌。
もちろん怖い話は苦手。
聞きたくもないし、体験したくもない。
友人の中には、その手の話が大好きな子もいる。
その子達は、お化け屋敷とか、心霊スポットとか、喜び勇んで行く。
本当は怖いくせに、強がりを言い合っている。
私には考えられない性格だ。
もしそんなところに行って、悪霊に取り憑かれたらどうするつもりなのだろう?
後の事を考えない、浅はかな行為だと思う。
怖がりな女の言い訳なのかも知れないけど。
ふと気づくと、私1人。
どうしよう? どうしよう?
他のみんなは心霊スポット巡りに出かけた。
今から追いかけるのも嫌だ。
それにそんなところに行きたくないし。
怖い。怖いよ。
足がすくむ。手が震える。
歯の根も合わないほど、口元がガタガタする。
その時、ゴトッと物音がした。
思わずビクンとしてしまう。
足音? 話し声?
誰かが近づいて来る気配がする。
何? 何?
私は怖くなって物陰に隠れた。
「そこに誰かいるの?」
「いるなら返事してよ」
若い女の子達の声だ。
すぐ後ろで聞こえた。
私と同世代くらいだろうか?
少しホッとする。大丈夫だ。
私は立ち上がって振り返り、その女の子達に言った。
「見たな」