召喚式・終了
何人か加護が与えられた辺りで、キラキラがクリュー、ローゼ、リーリエの周りに集まり出した。リーリエから、あの二人は『白い精霊の加護を受ける』と聞いている。色からして珍しい聖魔法の使える精霊では無いかとルドルフは思う。彼女らは『ヒロイン』と『ライバル』で特別なのだそうだ、が、リーリエだって可愛いし、可愛いし、可愛いと、とても納得がいかない。
そんな事を考えていると3人の周りにキラキラしたものが集まっていないだろうか?
「そこ、静かに。まだ終わっていません。」
神官が3人にそう言った。そう言いながら焦ってないか?
そうしているうちにリーリエはどんどん光に包まれていく。3人では無い。リーリエだ!そう気付いだ時にはルドルフはリーリエの元に走っていた。
ルドルフはリーリエを抱きしめる。
「すまない。リーリエを気に入ってくれたのは有り難く思うのだけど、僕のリーリエは普通の女の子なんだ。それくらいにしてくれないだろうか?」
懇願が通じるのか分からなかったが、ルドルフはそう言った。これで収まってくれなかったら…
リーリエの周りに渦巻いていた光が少しずつ離れていく。
「ルドルフ君!儀式中は邪魔しない約束…」
「リーリエはもう加護を受けたようですよ?僕には想定外の事が起こっていた様に見えましたが。」
何も対応出来なかったじゃ無いか!神官達は止めるかどうか迷っている様に見えた。なんの問題も無いのに儀式を止めようかと迷うわけがない。何か迷うような事態だったのだ。止めなかったのはこの神官達が決断できるだけの経験や知識が無かっただけだ。
「皆さんの邪魔にならない様外に出ています。行くよ、リーリエ。」
リーリエを怖がらせない様にと優しく声を掛けて、リーリエの肩を抱いて部屋を出ると、ドアの前にはシェーンハイト先生がいた。
「召喚式は終わったのかい?」
「ちょっとハプニングがあったので。リーリエも加護は頂いたのでみなさんの邪魔にならない様に帰ります。」
「あぁ、貰った加護の確認は…」
「後日。リーリエ、おいで。」
簡潔に答えてさっさと帰路に着く。
本当ならリーリエに吸い込まれた光のことで何か異常をきたすようなことはないのかをすぐにでも神殿で調べて貰いたかったのだか、今日の神官の様子ではリーリエがどう言う扱いになるかわかったものではないと思った。
ふと、気づくとルドルフはかなり強くリーリエの肩を抱いていた事に気付いた。そっと離して手を繋ぐ。
通路にはまだ召喚式を待っている子達でいっぱいだった。召喚式が終わってほっとした様子で帰り支度をしている子達もいた。
リーリエもそうやって二人とキャアキャア言って帰りたかったのだろうと思うと、ああした事への後悔は無かったが、普通に帰れなくなった事が申し訳なく思えた。
「…折角の召喚式、僕が邪魔してごめんね…」
楽しみにしていただろうに…
「ち、違うの!なんか、あの時声が聞こえて…つい『三食昼寝付き(本当はおやつも)』って言ったらなんかみんな飛び込んできたっていうか…」
「…へ?」
みんなとびこんできた?
「リ、リーリエ、どゆこと⁇」
「あ、あのね、なんか『僕も!』って聞こえたからこっちに来たいのかなぁ?って思ったらつい、待遇の良さをアピールしたくなって。そうしたらなんかいっぱい集まって止まらなくなって…」
バツが悪そうにえへへと笑うリーリエ。
「フ、フフ、フフフ…」
「に、兄様?」
「僕のリーリエはやっぱり精霊にもモテモテだっただけか!……⁉︎いかん!精霊!リーリエは君達だけのものではないぞ⁉︎リーリエはマイヤー家のだな」
『マイヤーのこうるさい』
『おおきいマイヤーうるさい』
「な、な?ふえて…」
『るどるふがんばったよ、うるさくないよ、ざんねんなだけだよ』
『よくまわりみろよ、みんなどんびきだよ。だからるどるふはよ』
最後はどうやらルドルフについている精霊の様だ。リーリエには精霊の声も姿もはっきり見えていて、小さな口を尖らせて抗議する姿も見えていた。可愛い口論についプッと吹き出してしまう。
「お兄様、早く帰ろ?お母様もお父様…はまだ仕事か…心配して待ってるよ。」
「そうだね。」
聞きたいことは色々あるが、人がまだいっぱいのここでは良く無かろうと気付く。我ながらリーリエの事となると冷静さに欠けるなと反省するルドルフ。
続きは馬車に戻ってからにしよう。
馬車置き場に行くと、
「ルドルフ、妹さんの召喚式は無事終わったのか?」
と声を掛けられた。本来なら御者がいるので馬の世話をしたり一度屋敷に帰ったりとしているのだが、ルドルフはリーリエに着いて行ってしまったので、馬車を預けていた。
「うん。終わった。まるまる任せてしまってごめんね。会場の手伝いを…て言うか、うちの妹ジロジロ見ないでくれる?減るから。」
「はじめまして、リーリエです。」
「うっわ、ルドルフに似てるけど、ルドルフと違ってかわいい。」
「かわいいでしょ?かわいいから見ないで。」
『ルドルフどんびきー。リーリエどんびきしてるよー』
馬を返して貰いながらも悪態をつく。リーリエももちろん転生者なので身分差なんて考えていないが、ルドルフもいつもこんな感じなのだろう。
「どんびきなんてしないよ。お兄様は一番ステキだもの。」
リーリエは小さな友達にだけ聞こえるように言った。
お読みいただきありがとうございます(゜∀゜)
ルドルフどんびき〜生暖かく見守ってやってください。