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召喚式・準備

 学園に着くと結構な人が集まっていた。学園は小中高と分かれているが、小学部は平民と爵位の低い貴族又は物好きな貴族が通う。貴族は中等部から通い始める者が多いのだが、反対に平民は中等部には行かない者もいる。高等部になると魔力や魔法と今までの勉強とは違う事を学ぶので、ダメ元で魔力測定に挑戦してみようと言う平民もいる。

 小学部や中等部出身の平民もいるが、魔力測定に参加する為に田舎から出てきたばかりの者もいるので、控室は貴族と平民で分かれている。現在中等部に通う子達は制服を着ているのでわかりやすい。参加にあたっては身元保証などの書類も必要なので怪しげな人物は入れないはずだが、100%安心とも言い切れないからだ。


 「リーリエ、今日はいつもの学園とは違うから、兄様の手を離してはいけないよ?」

 「はーい、お兄様。」


 リーリエは興味津々で周りを見回している。本当ならさっさと控室に連れて行きたい所だが、せっかくご機嫌なリーリエの邪魔もしたくない。


 一ザワッ一


 あれ、手ぇ繋いでますけど…

 今日試験だったよな…

 デート気分かよ…

 だからお貴族は…


 ハハハ、馬鹿め!今日の僕はリーリエの騎士なのだ!騎士が姫をエスコートする為に手を繋ぐのになんの不都合があろうか!(いや無い!)


 リーリエに声を掛けられたくは無いが、見せびらかしたいルドルフなのである。

 まぁ、背の低いリーリエは手を離してしまうと人混みに埋もれてしまうのもあるのだが…


 「すごいね〜、お兄様。こんなにたくさんの人が加護を受けに来るんだね!」

 「まあ、この中で加護が受けれるのは半分にもならないと思うけどね。」


 リーリエはまだ辺りをキョロキョロと見回している。頭ひとつ上に出ているルドルフは少し先にローゼを見つけた。


 「ローゼがいるよ。」


 ルドルフに言われたリーリエは、ぴょんぴょん飛び上ってやっとローゼを見つけてた。

 ローゼは長い癖のあるピンクゴールドの髪を今日は少し上の方に一つにまとめている。遊びに来る時にはいつも肩に垂らしていたので随分大人びた雰囲気になっていた。

 ちなみにリーリエの栗色の髪は(ルドルフが)フワフワ具合が好きなのでハーフアップにして残りは流している。


 「リーリエ!お兄様お久しぶりです!」

 「ローゼ、久しぶりだね。しばらく見ないうちに随分綺麗になったね。」

 「もぅ!お兄様ったら親戚のおじさまみたい!」


 軽くショックを受けるが顔には出なかったようだ。


 「って事はクリューも来てるよね?」

 「クリューは見てないわ。」


 リーリエとローゼはキョロキョロと辺りを見回すが、いつもには無い人の多さと何分それほどせの高くない二人なのでほとんど人に埋もれていた。


 「クリューは公爵令嬢だから貴族用の待合室にいるのだろう?それかまだ馬車かも知れない。」

 「あ、そうか。」

 「二人もそっちで待っていなさい。」

 「「はーい。」」


 貴族用待合室に着くとやはりそこにクリューがいた。その部屋にもそこそこ人はいたのだが、長い黒髪を後ろに流し、ずっと背筋の伸びた綺麗な立ち姿はすぐに彼女だと分かった。


 「ほら、右端辺りにクリューがいるよ。二人とも行っておいで」

 「えー、わかんない。」

 「はーい。リーリエ行こう。」


 二人は手をつないでクリューの元に行った。

 侯爵家のローゼはまだしも、男爵家のリーリエは貴族用待合室で待機するのはかなり微妙なのだが、公爵家のクリューと合流したのなら問題ない。

 三人が合流するのを見届けて馬車ででも待ってようかなどと考えていると、


 「ルドルフ・マイヤー」


 と呼び止められた。


 「シェーンハイト先生。」

 「今日は在校生は休みのはずだが…」

 「妹を送って来ました。」

 「ああ、なるほど。」


 オルヒエーデ・シェーンハイト、高等部の先生である。癖のある長めの白銀の髪を気怠げに後ろに束ねている彼はいつも女生徒からキャーキャー騒がれている。


 「丁度いい。確か君は土魔法が得意だったな。」

 「それしか使えませんが。」

 「ちょっと来てくれ。」

 「え〜…」


 グイグイ引っ張られて連れて来られた所は精霊の加護を受ける為の部屋…今年はルドルフの時より広い様だ。その部屋には神官が二人。神官は振り向いてこっちを見た。


 「彼なら土魔法が使えます。中々優秀だったと思います。」


 うろ覚えで連れて来られたらしい。そんなんで何をさせるつもりだったんだ⁉︎


 「シェーンハイト君、ありがとう。えーと、君…」

 「ルドルフ・マイヤーと申します。」

 「ルドルフ君、ここに椅子を30程作ってくれないかい?」

 「は?」


 不躾だが思わず口から出た。


 たかが土魔法が使える程度の学生に何言ってんだ、この神官。造形は嫌いじゃないが30って、馬鹿じゃ無いの?


 それ以上はなんとか心の中で抑えている。


 「椅子30なんて作った事ありませんけど。」

 「大丈夫大丈夫。マイヤー家は代々土属性魔法が強いだろう?」


 シェーンハイト先生も何も知らないで声を掛けた訳では無かったらしい。しかし…


 「強度を考えたらそれほどは作れるかわかりませんよ?それに僕は試験が終わった妹を無事に家に送り届けないといけないので余力は残しておきたいんです。」

 「なんだったら僕が御者をして妹さんと二人を送ろう」


 こんなチャラチャラした男を僕の妹にわざわざ近づける…?


 「今日の受験者が使う椅子なんだ。今から運んでいたら間に合わない。頼むよ。」

 「10ぐらいならなんとかしてみますけど。」

 「30作ってくれたら妹さんの召喚式に立ち合わせてあげよう。」

 「30ですね。分かりました。」


 これも先輩としての義務だろう。

お読みいただきありがとうございます( ̄∇ ̄)


精霊を召喚して加護を貰う儀式…略して召喚式です(汗)

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