新年度です!
お久しぶりです。ルドルフ・マイヤーです。
リーリエからクリュザンテーメ嬢のオススメを受けてからはや2年、僕は最終学年になろうとしています。あれからリーリエは度々クリュザンテーメ嬢を我が家に連れて来ていて、母上の緊張感は振り切ってしまい、今では母上までもが公爵令嬢の彼女を
「クリューちゃん、久しぶりじゃない!おばちゃん寂しかったわよぅ〜」
と言うくらい懐いています…
父上はクリュザンテーメ嬢が来たと聞いた時に記憶を消し去った様で、リーリエが『今日クリューがね』と言うとゼンマイ仕掛けの人形の様にギギギギギッと…どうやら記憶喪失には失敗した模様です。
◆◆◆
今年からリーリエも高等部に入学となる。高等部と言えばリーリエが話していた乙女ゲームの開始になるのだが、リーリエが欲望の赴くままに動いたせいで、ゲームのシナリオの原型はほぼ留めていないと言う事に、誰も気づいていない。(気付くべき当人はシナリオを覚えていない…)
「リーリエ、今日は召喚式と属性検査だからね?召喚式で加護を貰えたら講堂で魔力石に手をかざして属性検査をするけど、どっちも痛くも痒くも怖くもないから安心して。」
リボンを整えながらルドルフは言っているが、いったい何度目のセリフか…
「リーリエ、お父様は一緒に行けないけど…行けないけど…行け……やっぱり休む!こんなに可愛いリーリエが高等部なんて、きっと縁談の申し込みが山の様に舞い込んでしまうに違いない!」
「貴方!早くお仕事に行ってください!今日から新人さんも来るのでしょ⁉︎」
両手で顔面を覆って倒れ込む父…
「コンラート、父上の足を持って。」
侍従兼御者のコンラートに足を持って貰い二人で馬車に放り込む。
「父上、学校でのリーリエは僕がミジンコ一匹たりとも近づけませんのでご安心ください。行け!コンラート!」
「ラジャ〜……」
スピード狂のコンラートなら余裕で間に合うだろう。馬車なのに凄いスピードで走って行ったのをにこやかに見送った母はいそいそと何やら支度を始めている。
「…母上、保護者参観ではありません…あと、制服着ないで下さい。」
「だ、だって、だってリーリエちゃんがぁぁー‼︎」
「たかが召喚式に親が来るところなんて無いですからね。さ、リーリエ、随分遅れてしまった。急ぐよ。」
「はーい。」
「ちょ、ルドルフ!あなた何あなた御者台に乗り込んでるの⁉︎ルド、ルドルフ‼︎ズールーい‼︎」
(全く、僕が一番馬車の扱いが上手いんだから仕方が無いじゃないか。二番目のコンラートは父上を職場に送って行ったし。安全を考えたら僕が送るのが一番良いんだ。断じて過保護な訳じゃ無い。)
ウムウム。と一人満足するルドルフ。あの親にしてこの子ありである…
王都の別宅から学校まではゆっくり馬車を走らせても15分もかからない。元々は領地から仕事に通えない父の為の別宅なのだが、ルドルフの学校が始まってから家族で別宅に移っているので、別宅暮らしの方が長くなっている。
今日は召喚式と属性検査の日。クラスを分けるにあたり、能力が偏らない様に検査をするのだ。能力とは…そう、魔力である。学園に神官がやって来て精霊から加護を受ける。その加護によって属性が決まり、魔力の強さによって使える能力が変わる。
基本的に貴族には魔力を持つものが多い。そうなる様に婚姻を進めてきたのが要因なのだが、そんな事ははるか昔に忘れてしまった一部の人間は、貴族=魔力がある=偉いと言う様な図式を勝手に作り上げている。
しかし、どんなに魔力があっても使う窓口を作ってくれる精霊に好かれなくては魔法は使えない。神官は妖精と人間の架け橋となる…と言われている。
精霊の加護を受けてはじめて魔法が使える素地ができる。高等部で学ぶ主な勉強は魔力の使い方なのだ。
「リーリエは多分土属性だと思うよ。マイヤー家は代々土属性だからね。」
「おじい様が魔石の出る山を買ったのは土属性だったから?」
「さあ、どうかなぁ。ひょっとすると、魔石の方からお祖父様に近づいて来たのかもしれないね。お祖父様の土魔法は中々の物だったらしいしね。」
そういう事もあるらしい。惹かれあうと言うのか、妖精がひきあわすのかもしれない。
「土属性って何が出来るの?」
「そうだね、父上は道を作ったり、災害で崩れた建物を補修したりしてるかな?」
普段は文官なのだが、有事にはひっぱり出される。それが、貴族…魔力持ちとしての仕事なのだ。平民で魔力持ちであると分かったら即貴族から養子縁組か、後ろだての話がわんさか来るだろう。
「…公園…滑り台とか作れるかな?」
ウフフと笑うリーリエ。楽しい事を思いついた様だ。
「楽しみだね。」
「うん!」
女性の魔力持ちの活躍場所は中々にかぎられてしまうが、それでも、無いよりある方が選択肢が増えるのだ。
お読みいただきありがとうございます( ̄∇ ̄)
話がつながっていない事に気付きました。文章変更しています。申し訳ありません(T_T)