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王子と騎士と三人娘

 リーリエ達1年生はここ1か月程ひたすらに実技訓練と基礎知識の座学を繰り返していた。そして、今日は初めての個々の属性を使った授業。まずは多い属性の火、水、風、土、そしてロンメル先生の持っている木属性から習う事となっている。


 「今日はなんと!ヒュアツィント先輩とイーリス先輩におてつだいしていただきまーす。」

 「ヒュアツィント・フォン・プロイセンです。火属性を風属性、身体強化を使えます。」

 「イーリス・バルツァーだ。加護は火属性、身体強化。火属性は主にエンチャントで使っている。」


 みんなが委縮しないように先生が折角名前だけで紹介したのに自分で言いやがったよ…と言う内心はニッコリ笑顔で隠す。だてに1●●年生きていないのだ。


 「いつもの魔力操作をはじめまーす。はーい、両手を上にしてー…」


 みんな1か月間ひたすらこれを繰り返しただけあって、魔力を巡らせるのはお手の物になった。


 「はーい。みんな上手に出来るようになりましたー。今日は自分の加護属性を使ってみまーす。4大属性+先生が持ってる木属性、ヒュアツィント君、イーリス君の持ってる身体強化には対応できますが、雷とか氷とか、特に闇属性なんて暴走したら魔法省報告事案になりますので、使わないでくださーい」

 「「「はーい。」」」


 と、一応返事はするが初等部の先生みたいだとちょっと思う…


 「はーい、まず初歩の魔力操作と同じです。手のひらに乗るくらいの火、水、風を想像してください。土…はそうね、やわらかい土、身体強化はひたすら魔力操作をしててくださーい。」


 クリューは早くも手のひらに小さな炎を出していた。ローゼも手のひらから水を滴らせている。


 「すごーい!」


 リーリエの声で数人が振り返り、二人を見る。クリューは落ち着いて、ローゼは恥ずかしそうだ。


 「二人とも、初めてとは思えないわ。上手ね~。さぁ、みんなも頑張ってみて。先輩二人もみんなを見てあげて。身体強化を持ってる子は聞いてみてもいいわよ~。けど、使うのはそれ以外を使ってね。」


 身体強化は属性と言っても特殊なもので、どちらかと言うと騎士や冒険者の得意分野になる。魔力操作も必要なのだが魔法の授業で使われると…


 「こらー!身体強化はこつを聞くだけって言ったでしょー!」


 ものすごいジャンプをした生徒がいた。ただ着地に失敗してイーリスに受け止められている…そして体が急激な動きに耐えられず、蒼白な顔で地面に転がされた。


 「もう、教室内だったら天井に頭をぶつけて頭がぺっちゃんこになってたかもしれないわよー。」


 みんな青い顔をした。


 「…大丈夫だ。実際はせいぜい頭が割れるくらいだ。」


 蒼白になった生徒に真面目な顔でイーリスが言った。効果は絶大だ…


 「ふんぬぅぅ…」


 リーリエの手のひらからコップ?みたいな物が一個、二個、三個…


 「ちょっと、リーリエさん、土!先生土って言いましたよね!」


 五個目の比較的マグカップらしい物体を作った所でハッとする。


 「…お兄さまがいつも作ってたから…」


 ロンメル先生はため息をついた…


 「土属性はまずは土を出して。そうそう。質のいい魔力だと質のいい土が出来るわ。」

 

 ふむふむ。ミミズが好きそうな土か…堆肥…違うな、良い土……い…いい?いいってなんだ?んー…ねんど…粘土って遊べるよね!


 「キャー!リーリエさん!土魔法ストップ!ストーップ!!」


 にょろにょろと処理しがたいものを出して止められてしまったリーリエは仕方なく出てきた粘土をこねこねする…


 「リーリエ、失敗は付きものだわ。」

 「大丈夫、リーリエは出来る子だから。」


 クリューとローゼに慰められるが二人は上手に使えるからそんな事言えるのだ。珍しく拗ねているとそこに近づいてきたのはヒュアツィント…その後ろにはイーリスもいた。ヒュアツィントにはヒュアツィントの、イーリスにはイーリスの事情があるのだが、それを知らないロンメル先生は内心舌打ちをする。

 ヒュアツィントは魔力操作が上手い。実際学園で学ばなくていいくらいの個人授業をこなしているはずだ。王族が学園に来るのは学ぶためではなく、人脈を広げるためなのだ。その手助けをしてあげるついでに授業のお手伝いさせてやろうと思ったら二人セットで行動しているのだ。役にたちゃしないと思いつつ他の生徒を見て回る。


 そのヒュアツィントはリーリエに近づいて、


 「何が難しいの?魔力操作?」


 と聞いてきた。ヒュアツィントは生まれてこの(かた)見たことの無い『嫌そうな顔』を向けられ、ちょっと表情を引きつらせた。


 「えーと…まぁ、はい…」

 「そんなに気のない返事をされるのも生まれて初めてなんだけど…」


 つぶやいた後、ヒュアツィントはリーリエの耳元に囁いた。


 「私が君に婚約の申し込みをしていることは知っているよね。」

 「リーリエ!どうしたの?」

 「大丈夫⁉」


 すごい勢いで逃げようとして転びそうになる。結局捕まっているが…


 「失礼。ヒュアツィント、令嬢にそのような態度は褒められたものではないぞ。」


 身体強化ですばやく移動したイーリスに支えられていた。

お読みいただきありがとうございます。

三人娘出ただけ…次回も三人娘続きます。ついでに新生イーリスも…

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