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激震のマイヤー家

 「そもそも、何でライバルなの?ローゼちゃんもヘンネフェルト嬢もまだ婚約者も決まって無いでしょう?」

 「それは、ローゼが選んだ攻略対象者によって変わるのよね〜」


 リーリエはスプーンを咥えたまま柄尻を上下に動かしながら答えたので、実際にはモヒャモヒャ喋っていた。もちろんルドルフにはモヒャモヒャ語もクリアに変換されている。

 

 「ローゼちゃんは何がそんなに選び放題なの?」


 聞きようによると、ローゼはかなりアレな感じに聞こえるのだが…


 「ん〜とね…、攻略対象が8人でしょ?え〜と、ヒュアツィント様でしょ?イーリスと、ゾンネンブルーメ、グラディオーレン…」

 「ちょ!書き出すからもう一度言って。」


 面倒臭さそうにピコピコ動かしていたスプーンの柄尻を鼻の頭にくっ付ける。下顎の出たその顔はルドルフ的にはセーフでも世の中的にはアウトである事はさすがのルドルフにも分かる。

 もしもお嫁に行けなくても、兄様は家を追い出したりなんかしないと心に誓う。


 「ん〜、ヒュアツィント、イーリス、ゾンネンブルーメ、グラディオーレン、アイゼンフート…ん〜、あと忘れた!とにかく、その8人はローゼの事が好きなの。だからローゼはその中から誰かを選ぶの。」


 やっぱりいい加減な記憶だった…と思っていたら…


 「ヒュアツィントとイーリス、ゾンネンブルーメがクリューがライバルになるルート。で後が友情が芽生えるルート。ライバルの時はなんか巻き込まれて『〇〇様を託せるのはアナタだけよ!』って感じで再起不能になって、友情の時はローゼをかばって死ぬのよね?」


 死ぬ⁉︎


 「別名『巻き込ま令嬢』わたし、クリュー好きだから嫌なんだよね〜」


 思ったより内容が重かった。


 「他は死んだりしないのに、クリューにだけは製作者側が厳しいから、実はモデルが監督の元カノだったとかウワサがあったりして。」


 今更ながらにルドルフがすごい顔をして自分を見ている事に気づいたらしく、何事も無かったかのように可愛らしい上目遣いをしてみるリーリエ。

 おねだりモードを発動しても無理なものは無理である…


 「…まぁね、リーリエ、話はよく分かった(実は半分くらい全く分からない…)けど、男爵家嫡男から妹の同級生とは言え、公爵家のお姫様にお声がけするのもなかなか無理がある物なのだよ?」


 諭すように言うルドルフ。なんだか事故やら事件に巻き込まれるなら正直可愛いリーリエには近づいて貰いたくないが、さすがにそうまで言うのは憚られてそれだけを言った。


 「…うん、そっか…そうよね…」

 「まあ、リーリエが心配しなくてもヘンネフェルト嬢にもすぐに相応しい婚約者が出来て、その方が彼女を守ってくれるから…」


 ルドルフは向かい合って座っていた席から立ち上がって、リーリエのふわふわの巻毛を優しく撫でてにっこり笑った。それにリーリエはにかんだ様ににっこりと笑い返すのだった。


  ◆◆◆


 本日のオヤツはクレープ。クリーム色の薄い生地には綺麗な焼き目がついて、真っ白な生クリームと優しい味の滑らかなカスタードクリームがダブルで入っている。お好みでフルーツと、色とりどりのジャムをトッピング出来るように並べている。


 転生者の記憶を取り戻してからのリーリエはより具体的に食べたい物の説明をする様になった。しかし、完成形と原材料になんかそれっぽい物が使われてるぐらいの『ざっくり』と言ったら世の中のざっくりしたものに失礼なぐらいざっくりした説明で、それで完成形を導き出すルドルフはもはや一流の菓子職人を名乗っても差し支えないレベルだった。


 「あ、あの…突然おじゃましてしまいまして…」


 今、マイヤー男爵家に戦慄が走っていた。突然の来訪者はかのクリュザンテーメ・ヘンネフェルト公爵令嬢。彼女の後ろに立つお付きの侍女が凄い目つきでこちらを見ているように思うのに間違いは無いだろう。

 何故なら、ヘンネフェルト嬢の真横にはすごい笑顔のリーリエ…


 そうか…やけに引くのが早いと思ったんだ…


 いつもなら駄々を捏ねまくり、訳の分からない持論を展開するリーリエが、機嫌良く新しいオヤツのレシピを持って来たので、興味がお話からオヤツに変わったのだと思っていた。


 「お友達と帰るから新しいレシピのおやつ食べたい!」


 新しいオヤツも、お友達と帰るもいつもの事なので、ルドルフは疑問にも思わなかったのだ。


 「ほ、ほほ、本日はお日柄もよくこんな辺鄙な男爵邸にようこそおこしやす…」

 「母上噛みすぎです…ヘンネフェルト様、きっとリーリエがご無理を言ってお連れしたのでしょう…」


 後ろの侍女の顔がさらに凄みを増したのでどうやらリーリエの暴走に間違いないようだ…


 「い、いえ!わたくし、いつも一人でいますので、リーリエが…あ、リーリエがそう呼ぶようにと言ってくれたので…」


 一ニコッ一


 侍女が死神みたいな顔をする…リーリエは天使みたいにニッコリ笑っている…母上は…ちょっと見たくない…


 「お兄様も、宜しければクリュザンテーメ…クリューとお呼びください」


 一ニコッ一


 「クリュザンテーメ様…クリューさま…クリューちゃん…今日だけはリーリエの兄としてお付き合いさせて貰うね?」


 名前を呼ぶたびに悲しそうな顔をするクリュザンテーメ…クリューに負けて本日だけはと腹を括る。母上は既に少ない使用人に別室に運ばれた…


 「マイヤー家にようこそ。大したおもてなしは出来ないけど、リーリエの考えたレシピのお菓子があるから食べてみてくれないかな?」


 基本的に妹キャラには弱いルドルフだった。

※マイヤー家、別に辺鄙な所にある訳ではありません。母上がテンパリ過ぎただけです。


お読みいただきありがとうございますm(_ _)m


ハイスペック加減が菓子にしか使われていない兄…



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