ルドルフ、妖精と話す
「チョー怖っ!マジ怖っ!」
引っ張ってこられて訴えるのはもちろんエックハルト。そうか?いや、そういえば身体強化の訓練を受けているイーリス相手に普通に動けたなぁ…威圧も感じなかったし。
「なんなん(※何なの)?あんたなんなん?」
「何男言われても…長男?」
「面白くもねーわ!」
どつかれた。
「マジなんなん?何であんなのに目を付けられた?」
「新しく受けた加護?」
はぁぁぁ…と深いため息を吐かれる。
「なんで?身体強化?修行でもしたのか?」
「いや、事故。」
「でも、身体強化くらいで?」
「…」
身体強化は訓練で習得できる加護である。騎士、兵士は厳しい訓練で身体強化を手に入れる。だが、召喚式の加護によって手に入れた場合は、より強力なものになる。正式な召喚式で得た加護では無いルドルフはどちらになるのだろう?
「…婚約の申し込みをされた。」
「お前が!?」
「妹がだ!」
「…それにしては喧嘩腰だったよなぁ、イーリス・バルツァー。」
やっぱり良く見ている。引き伸ばしても授業に入れば複数の加護を貰った事はわかってしまう。
「加護を貰った。」
「いや、聞いたって。」
「氷と木属性。」
「…お前、氷使ってたの自覚してた?」
「講堂の?」
「いや、朝。」
「?」
「……お前、ホントに妹ちゃん絡みだと規格外だよなぁ…」
「ほら、教室行くぞ。」
ルドルフはエックハルトにかわいい妹を紹介してやってもいいかと思った。(あくまでも自己紹介のみだが…)
◆◆◆
本日のオヤツはリーリエ一押しのヴィントボイテル(シュークリーム)。氷属性の加護を得たルドルフはシューアイスも作れます。
しかし、本日はシューアイスでも、クリーム注入タイプでもなく、サクッと切れ目を入れて自分でトッピングしていくタイプ。クリームも生クリームとカスタードの2種類を用意して、果物もイチゴ、ブドウ、バナナ、モモ(っぽいもの)色々並べている。
「リーリエ、学校で妖精達は君の目にはどう言う風に見えてるの?」
「へあ?」
口の端にクリームを付けたまま、リーリエはルドルフを見た。ルドルフがさっとハンカチを出してクリームを拭き取る。
リーリエは頭を捻って、
「小さい、カラフルな服の…虫?」
『『『虫⁉︎』』』
「ご、ごめん。小人?」
リーリエの様子からしてどうやら怒っていたらしい。
「僕には見えないからなぁ…」
『なになに?るどるふ、ぼくたちとはなしをしたいの?』
『りーりえあに、なにー?』
『あたしはけーきがたべたい!』
『ぼくおにくー』
2年前の召喚式で呼ばれてルドルフと生活を共にしていた(?)妖精が一番会話になっているので、その妖精に話をしてみる。
「えーと、君。聞いての通りお兄様にも見えない?」
『まじいってるまんま』
(くそう、コイツ前々から思ってたけど口悪いし。
お兄様の妖精でなければキュッてつまんでライナルトおじさまの靴下の中に入れてやるのに…)
『ん~…ぼくになまえをつけたらるどるふにもみえるけど…』
「お兄様の妖精が名前を付けたら見えるようになるって。」
「ふーん、そうなの?すごいね。」
それじゃあ、と考えている様子のルドルフ。
『ぼくだけしかみえないけど』
「イオノ。」
『「あ…」』
ルドルフの目の前にうすぼんやりと小人が浮かび上がる。目を細めて凝視する様子はリーリエとそっくりだが本人は気づいていない。
そのうすぼんやりは次第にはっきりとした姿になり、リーリエがいつも言っている『黄色の服』を着ている、透明な羽を持った妖精の姿になった。
「一番に僕のところに来てくれた子だね。」
『…マイヤーのこはきょうそうりつがはげしいんだ。』
顔を赤らめてモジモジしている所を見るとどうやら照れているらしい。
「イオノに聞きたいことがあるのだけど、良いかい?」
『ぼくがわかることならいったらだめなこといがいおしえてやる。るどるふはぼくになまえをくれたからとくべつなけいやくしゃだからな』
胸を張って答えるが、リーリエを介さなくても若干リーリエ語だった…が…
「?特別な契約って何?」
『とくべつなけいやくはすごいけいやくだ』
リーリエ語が常態化しているのか?まぁ、何かが特別なのだろうが聞くと後悔しかなさそうなので、今はスルーする。
「イオノ、妖精は加護を受けた人のすぐ傍にいつもいるのかい?」
『あんまりいない。きもちいいといたりする』
「加護を貰ったら妖精が必ず傍にいないといけないわけじゃないんだね。」
『ぼくたちがせっかくつないであげたのにきもちわるくなるひとがいるから、いっしょにいてもいなくなることもある』
気持ち悪いとは『気分が悪い』と言う事ではなく、『悪い人間』になってしまった、と言う事らしい。
「今日みたいな事を防ぐ方法はあるんだろうか?」
『?るどるふきょうやったみたいにこおりとばしたらいい』
「お兄様の氷攻撃、みんなのおでこに当たってたよ。」
思い出し笑いをしながらリーリエが言うが、ルドルフは慌てて、
「みんなに当たってたのか!?すまない。」
と、謝ったのでリーリエは益々笑い出す。
『るどるふじょうずにいたずらこぞうどものあたまかちわってたぞ』
「…。」
複雑な表情をするルドルフ…
「お兄様、割れてないから!当たっただけだから!」
『りーりえあにだいじょうぶだよー』
『しんぱいしなくてもしんでないよー』
『あぁ。だからぼくしかみえないむぎゅっ』
「おにいちゃん、イオノ疲れたって。」
「リーリエ、かわいそうだから離してあげて。」
イオノのほっぺを親指と人差し指で摘んでいた手をしぶしぶ離して、いらん事を言うなと乙女に有るまじき顔で威嚇する。
『りーりえ、おにー』
『りーりえ、あくまー』
(くそう、コイツら…)
「ほら、かわいい顔が台無しだよ?リーリエ。」
「はぁい。」
『かわいいもんかー。おにがわらのようだったぞむぎゅっ!すびばせん…』
『りーりえあにおにがわらー』
『りーりえそっくりー』
ちょっと反省したリーリエだった。
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