中央神殿にて②
レーヴェンツァーンは黒光する魔石をリーリエに手渡す。
「その魔石に力を注ぐイメージをして下さい。手のひらに、力を集めて…注ぐイメージで…」
『うっせーなこいつ』
『うるさーい』
むーん!と力を入れながら横目でレーヴェンツァーンの妖精を探すリーリエ。上手くやっているように見えてすでに飽きていた…
「うわぁー…」
ルドルフの口から思わず呆れたような声が漏れてしまう。黒かった魔石が彩色されていく。気付かれていないと思って横目でチラチラレーヴェンツァーンの方を見るのも、このオシャレになった魔石も限りなくアウトである。
「素晴らしい!土、火、雷、聖の4種の加護です。色もハッキリでていて素晴らしい。」
まぁ、集まった妖精の数に比べたらマシな方だろう。あの時はどうなる事かと思ったから…
「あ!」
コロコロと転がる魔力判定用魔石。ルドルフはついと手を伸ばし…
「「「あ」」」
一瞬にしてカラフルに色付く…
「あぁ…魔力を込めてしまいましたね…しかし、ルドルフ君も4種ですか!素晴らしいですね!」
レーヴェンツァーンが驚いて魔石を見る。ルドルフも冷静な彼にしては珍しく固まっている。
(何故4種?何故増えた?)
黄色は土、氷魔法は仕えたので水色は氷だろう。緑は緑の服を着ている妖精と言っていたのでそれだとして、白は?乳白色か?
「身体強化?」
「リーリエ嬢とは全く違うのですね。」
否定しないという事は身体強化なのか…正直剣など使えなくはない程度にしか使ったことのないルドルフなので、身体強化などほぼ見たこともない。改めて誰かに教えを請わなければ使えない能力だろうが…
「…後発的な加護の発現はご存知ですか…?」
◆◆◆
リーリエです。只今別の部屋に来ております。ここはレーヴェンツァーンの私室です。わたくしの部屋では無く、神殿内でのお部屋らしいです。校長先生の校長室または用務員のオジサンの用務員室みたいなものでしょうか?
お兄様が「後発的な…」って話をしたので資料があるとかでここに連れて来られたのですが、はっきり言って飽きました。これだからオタクはよ…
レーヴェンツァーン・イエンシュ(23歳)たしか、聖、水、木属性の加護を持っていて、その中でも聖属性は抜きん出る実力の持ち主。国を混乱に陥れようとする隣国の企みで、王都がアンデットに襲われるというイベント発生時、レーヴェンツァーンを攻略していないとクリューが死ぬ。
ハッ!クリューが死ぬ⁉︎だけどわたし、ローゼじゃ無い!確かイベントは高等部入学後の夏?くらいの話のはずだ。まぁ、わたしがここで渡をつけるのも悪く無いだろう。
『ねぇ、りーりえ、このひとおかしくれないの?』
『おちゃもださないね』
『このひとのようせい、かえっちゃってるね。つまんなーい』
今日ばかりは黙ってくれないかな?諸君。わたしは珍しく密偵モードなんだよ。
それはそうとお兄様の白いやつ、聖魔法なのかと思いきや、あれ強化だったんだ…初日にちょろっと顔を出してからウロウロしてるから中々姿を見れなかったんだよね〜。
でも、お兄様、普段は魔力操作完璧なのに今日はどうしたんだろう?なんて思ってたら、ちょうどそんな話をしていた。
「僕は魔力操作には自信があると思っていたのですが、魔石を一つ無駄にしてしまい申し訳ありません。」
「いや、マイヤー家からお納めいただきました魔石からしたら微々たる物なのでお気になさらないでください。」
『るどるふだだもれだたからさぁ』
『だって、まだなれてないんだもん!』
『そうだよ!ぼくなんてまだつかってもらってないからかげんもわからないんだよ‼︎』
むむむ、使って把握するのか。ってことはわたしもダダ漏れ?って言うかダダ漏れってなんか嫌な言い回しだな…
「後発的な加護の発現は多くはありませんが、無くは無いのですよ。かく言う僕も聖魔法は神殿に来てからの…そう言えば、ルドルフ君、召喚式の時にはシェーンハイト君が…あ、彼は僕の後輩になるんですけど…君は土の加護だけだと…」
「…正直に話すと召喚式の時に、僕も再び加護を得たようなのです。そんな事があるのか伺いたいと思っていたのですが…」
「!…普通はありません。ですが、召喚式に参加している神官の中には稀に新しい加護が増えている者が無くは無いです。まあ、普通は1つですけど。」
「お兄様は魔力量があるから余裕があったって妖せ…よ、よう!せっかく来たのにルドルフ留守か?って来たお友達が言ってました!」
うぉっと!妖精って言いそうになった!すごい目で見ている兄貴に気付き言い直したのに、今度は残念なものを見る目つきでわたしを見てるんですけど⁉︎わたし、超うまく言ったよね?特に『よう!〜留守か?』のセリフがもう生き生きして、まるで役者のよう!………いや、令嬢そんな事言わない…?
「は、はは!観察眼のある友人ですね!」
「そうなんですよ〜。ね、お兄様!」
「ま、まぁ、そうなのかな…?」
むむむ、ソレ、ダレダヨって思ってらっしゃいますね?いえ、ワタクシもそう思います…(汗)
「元々の加護から増えてる事は確実ですので、学園側には報告しないといけませんが、在学中で良かったですよ。一から学び直さずに済みますから。」
なるほど、わたしだったらそれはちょっと嫌だな…あ、でも兄貴と同級生って言うのもちょっと新鮮?
お読みいただきありがとうございます( ・∇・)
ルドルフのハイスペックさを考える余り、リーリエが前世でやれなかったであろうJT生活をすっ飛ばしてしまった事に気付きました…