秘密会議
なん、だと⁉︎
今ちょっとおかしな事を聞いたような気がするが気のせいだろう。
「お兄様怒らないよ。」
…これはアレに言っているに違いない。何を怒らないと…いや、気にしてはいけない。
今だけスルースキルを発動して聞き流す事にした。
目下の問題はリーリエの入学準備の為の適性検査を受けて、無事にクリアするという事である。学校に行かないという選択肢も無くは無いのだが、クリューとローゼとまだ通える(加護を受けれなかった場合は同じ学校には通えないので)と楽しみにしていたのに、それを取り上げてしまうことはリーリエを溺愛するマイヤー一家にはとてもできる事ではない。
「とにかく、加護は貰えているのだから属性を報告して、まずは入学手続きをしましょう。後のことはそれから考えましょう。」
という事で第一回マイヤー家リーリエ入学につきびっくり事件が起こってしまったかもしれないことに対する家族会議が終わった。(第二回があるかは不明)
何となく気の抜けた夕食を済ますとルドルフはリーリエの部屋のドアを叩いた。
「はい。お兄様?」
リーリエに招き入れられて部屋に入る。小さなテーブルにフルーツティーとクッキーを置いてリーリエも座るように促すと自分もそこに座った。
ルドルフの訪問理由は一つ。
「で、リーリエ、何かまずい属性があるの?聖属性かい?」
ブーッ!!…キラキラキラ…
「うん。見事な霧吹きだけどレディには必要ないかな?」
冷静にハンカチを出してリーリエの口周りを拭いてから自分の顔を拭く。
「ど、どうして…」
ほぼ犯人のソレである。
「あの場でリーリエが話しちゃまずいと思うだろう事ってそれぐらいだからね」
「それってどうなの?」
「聖属性と言っても珍しくはあるけど、全くない訳じゃないよ。まあ、同じ年に3人いたとなると中々ない事だけどね。」
どこまでお見通しなのか…リーリエに関してならどこまでもなのだ!(どんびきー)
「中々ない事だけど、全くない訳じゃない。それならリーリエはどうしてそれが引っかかるんだい?あの、例の乙女げーむってやつなの?」
リーリエは一瞬迷った後、こくりと頷く。
「…クリューとローゼがあの召喚式の時に聖魔法の加護を得たことが分かって、花乙女に選ばれて…」
「ちょっと待って。花乙女って何?」
「え?花乙女って…花乙女だけど…」
ルドルフは頭を捻りしばし考えた後、
「…何する人なの?」
もっともな質問である。相変わらずのリーリエのざっくりとした説明は混乱はもたらすが正解は遠過ぎて…つまり役に立たない。
「あ!聖魔法だから聖女的な?」
「…聖魔法って言っても中でも色々な魔法があるよ。それこそ洗濯物を清潔にするレベルからアンデットを浄化するくらいまでとか。だけど、どれをとっても『聖女』なんてものはないんだけど。そんなくらいで聖女なんて呼ばれるなら世の中聖女に聖人だらけになちゃうよ。」
どういうことなのだろう?リーリエの記憶ではどちらが花乙女に選ばれるかで切磋琢磨して、その学園生活の中で恋をして、陰謀に巻き込まれて、悲しい出来事があって…など、選ぶルートによって二人の運命が変わっていく…そんなシナリオだったのに、まず『花乙女』がいない?
「それより使える魔法の種類が多い方が問題なんだ。魔法の種類が多い=危険人物となって野放しにしたくない国は何とかして取り込もうとするんだ。男なら出世という形で縛り付け、女の子は王族との結婚という形で縛り付ける。他に力を分散させたくないって事だね。」
たくさんの魔法…リーリエの加護はいくつだったろうか?
「番号!」
『いち』
『に』
『さん』
『これってさぁ、なんかいみあるの?』
『るどるふー、くっきーいがいのおやつは?』
ちなみにルドルフの目にはいきなり立ち上がったリーリエが「番号!」と叫んだのだけが見えている。
「…あの、お兄様の妖精さんがクッキー以外のおやつを要求しています…」
それに気づいたリーリエは恥ずかしそうにそれだけ言う。
「んー、何となく何がしたかったのか分かったような気がするけど、それじゃないね。まぁ、クッキー以外のおやつは無くもないけど、妖精っておやつ食べれるの?」
『るどるふはばかだなぁ!ぼくがいままでどれだけのおやつを食してきたかしらないんだな?』
もちろん知らないがルドルフには全く聞こえてもいない。
「すっごく色々食べたって言ってる。」
「ふーん。」
しょうがないなぁ…と食堂に行ったルドルフ。一人になったリーリエはゲームの内容を思い出してみようと努力するが、思うように思い出せない…
『くっきーいがいのおやつ、なにもってくると思う?ぼくはプリンがいいな。ぷるぷるの』
『ぷりん…ぷるぷる…』
『わたしさっきのおやつがいい。そーすのかかった』
『あれはばんごはんだよ。』
思い…出せない…
『ばんにたべるならたまごりょうりがいいな』
『あー、ずるい!くっきーもうない!』
「うるさいわ‼︎」
『ちぇっ、りーりえのりわるーい』
リーリエはわたしも数に入ってたのかとガックリする…
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