表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/83

兄と妹

兄妹のお話。こんなお兄ちゃんがいたら…いい?

 ルドルフ・マイヤーの妹、リーリエは見た目は可愛らしい女の子だ。兄と良く似たフワフワした柔らかな栗色の長い髪、クルクルと良く動く(はしばみ)色の目、そして声が可愛い。両親に溺愛され、2歳歳上の兄にも溺愛されているのだが、ギリギリ貴族の男爵家であるマイヤー家は、ルドルフの祖父が買った山に魔石が出た事で成り上がった成金商人と揶揄されている家だ。まだまだ貴族が金を稼ぐなんて…と言う風潮もあり、男爵家のマイヤー家如きは貴族ですら無いと言われる扱いだ。

 そんな家だからこそきっちりとした淑女に育てないといけないはずなのに、甘々すぎる両親と兄。ただ、兄のルドルフは自分だけは妹に厳しくしていると思っている…


 リーリエには、小さな頃から少し変わった所があった。ルドルフや両親に不思議な話をし、見た事もないような料理や菓子を食べたがったりした。困惑した両親は方々を探し回ったりしたが、見つからないものが多かった。甘々の兄は幼いながらかわいい妹の為に自ら調理場に立ち、いつしか妹の不思議料理担当になっていた。ルドルフはリーリエに一番厳しいのは自分だと思い込んでいたので、ほとんどの妹の要求に答えていた事に全く気付いていないのだった…


 リーリエの妄想が酷くなったのは11歳の夏の日、彼女考案のシルクのように薄く削った果実氷に蜜を掛けた冷たい菓子(いわゆるフワフワかき氷。もちろん作ったのはルドルフだ)を食べていたときだった。リーリエは淑女らしからぬ動きで口の中にかき込んで…テーブルに突っ伏して「うー…」と唸ったかと思うと突然顔を上げて叫んだ。


 「これ、乙女ゲームの世界だわ!」


 ………はい?


 ルドルフが困惑する。


 「いつかあなたの元に届くまで〜花乙女と8人の騎士たち〜略していつ花の世界よ‼︎」

 「…何言ってるの、リーリエ。…もうちょっと上品に食べれないかなぁ…もう、いつつでもむっつでもいいから、食べ終わったのなら口を拭きなさい。そして、口からおつゆが飛んでいるよ、はしたない。」


 ルドルフは白いハンカチを出してリーリエの口を拭った。来年からは中等部に上がると言うに、目を離すとまだ小さい子のような事をする。

 ルドルフの再再(さいさい)の指導をもってしても治らなかったリーリエの奇行は今に始まった事ではないが、とうとう物語の世界の話でもしだしたのだろうか?ルドルフには乙女ゲームと言うのはわからないけど、乙女と言うからには女の子の読むお伽話の様なものだろうかと思った。


 しかし、そう、リーリエは転生者だったのだ。リーリエの言う所の『いつかあなたの元に届くまで〜花乙女と8人の騎士たち〜』略して『いつ花』とそっくりな世界に紛れ込んだ…。


 「兄様、兄様の学年にフィアツィント様っていらっしゃる?」

 「…まぁ、いらっしゃるね、ずっと。」


 フィアツィント・フォン・プロイセン。我が国の王太子だが、ルドルフが通う学校は貴族が接点の無い庶民と交わるための学校でもあるので、王太子はずっといる。今更改めて確認することもないくらいずっと同じ学年でいるのだ。

 多分、貴族令嬢としてよっぽどの子供でも知らないはずのない事を彼の妹は知らないのか?


 興味が無かったのだ。


 「リーリエ、それでそんな事に突然興味を持った理由を話してもらっていいかい?」


 『そんな事』で済まないのだか、年齢以外で王太子に交わることのない男爵家なのでスルーする。


 「フィアツィント様は『いつ花』の8人の攻略対象者の一人よ。そして、ヒロインは私の親友のローゼ・リッシェ。」


 急に王太子の名前なんか出してきたから興味を持ったのかと思いきや、自分の友達をヒロインだと言い出す妹。しかしこれまた王太子に興味を持ったわけで無いのならスルーする。ルドルフのスルースキルは高いのだ。

 ローゼ・リッシェは何度か会ったことがある。長い少し癖のあるピンクゴールドの髪の、ぱっちりした目をしたかわいい女の子だ。もちろんリーリエ程ではない。


 「対するライバル令嬢はクリュザンテーメ・ヘンネフェルト様。黒髪のご令嬢よ。」


 ヘンネフェルト家は公爵家で先代の公爵が先王の妹を娶ったバリバリの中心貴族だ。


 「いつ花のいいところは悪役令嬢はいなくて、リーリエもクリューも良きライバルなのよ。」


 はて?リーリエはヘンネフェルト嬢と愛称で呼び合うほど仲が良かったのだろうか?ルドルフがどんなに思い返してみても今までヘンネフェルト嬢の名前が出てきた記憶は無かった。


 「アンチからは設定がぬるいとか言われたけど、私は有り余る悪役令嬢ものよりもお互いを思いやる友情も感じれる『いつ花』はとてもすてきだと思うの。」


 夢の話にしてはやけに話が出来上がっている。超絶かわいいが理路整然とした話ができないリーリエが、荒唐無稽だが筋の通った話をしている。


 「リーリエ、大丈夫か?熱でもあるのか?」


 ルドルフはリーリエの顔を両手で挟み、心配そうにのぞき込んだ。リーリエは顔を真っ赤にしてルドルフに怒る。


 「リーリエはもう小さい子じゃないんだから止めてよ!」

 「ハイハイ。ごめんね、お姫様。」


 リーリエはプンッ!っと拗ねて横を向いてしまう。それすらも可愛いと目を細めて妹を見る姿は醸し出す雰囲気がまるで好々爺であった…

 

お読みいただきありがとうございます<(_ _)>


兄妹モノですが、兄×妹にはなりません。ただのブラコンにシスコンです。

こんな兄貴がいたら良い?うざい?みたいな…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ