幕間 塩月
「奏弥、修練で忙しいんだって」
「……あっそ」
カヨは少し悲しそうな顔をして、イセの手当をしていた。イセの腕に、丁寧に包帯を巻いていく。イセはそれを黙って見ていた。
「あいついないと、そんなに寂しいのかよ」
「じゃあ、イセは寂しくないの?」
「……寂しくねぇよ」
「そっか」
指の先まで丁寧に巻かれた包帯を、カヨは丁寧に結んで外れないようにした。空ではトンビが鳴いていた。
「ねぇ、イセ。このペンダント、家の宝石の一個盗んで作ったんでしょ? なんでそんな危ないことしたの?」
「……似合うと思ったから。まさか、それがお前の能力の発動のきっかけになるなんて思ってなかったけどな」
「そっか……。イセはなんだっけ? 家宝の刀で戦うんでしょ? かっこいいね」
「そうかい? そりゃ、どうも」
イセは、丁寧に手当してもらった腕を見て、ため息をついた。
「ねぇ、イセ。私、イセにだけは、伝えておきたいことがあるんだ」
風で、置きっぱなしになった稲が少し音を立てている。
「何?」
カヨは、イセにグッと近づき、耳元で
「私ね、奏弥くんのことが……」
それを聞くなりイセは、そうかいと言って、
「じゃあ、頑張れよ」
と手を振りながら、カヨの屋敷を後にした。