最初にやること
目をそっと開くと、実家があった。
懐かしの我が家。
もう二度と帰れないと思ってた場所だ…。
玄関を開け、中に入る。
とても懐かしい匂いがする。
ポロポロと涙がでてきた。
「ただいま…」
誰もいないのは分かってるけどね。
本当にありがとう…神様…。
俺はリビングのソファーに座ってしばらく泣いた。
俺の実家は元々森に囲まれた家だったんだが、転生しても窓から見る景色は前世と同じだった。
なにせ納屋の横に見慣れた木がある。
あれは間違いなく実家に生えてた柿の木だ。
ざっと見える範囲は同じようだけど…。
よし。明日にでも周囲の探索をしてみよう。
でもまずは家の電気や水道のチェックが最優先です。
家中を色々調べ回ったが、概ね問題はなさそうだった。
唯一前世と違ったのは仏壇が神様の木像になっていたことだ。
神様像の足元にはお賽銭箱が置いてあり、どうやらコイツに異世界のお金を入れることで【通販】が使用できるみたい。
うーん、とりあえず拝んでおこう。
そして一通りの確認を終えたので…。
お待ちかねのアイツを始めようじゃあないか。
そう…、料理だ!!
入院生活でろくに飯を食えなかった反動なのか、物凄く腹が減っているのだ。
俺は急ぎ冷蔵庫など諸々の食材を確認する。
残念。食材関連はスッからからんなのね。
だが実は転生で授かった【通販】には20万円くらいお小遣いが入ってたのよね。
さっき試しに使ったら秒で玄関に食材が届いた。
いやこれ現代でも完全にチートだね。
ということで厳正な審査の結果、記念すべき異世界一発目の料理が決定しました。
みんな大好き、カレーです。
だがみんな、ちょっと待ってくれ。
俺の作るカレーはそんじょそこらのカレーじゃない。
必ずリンゴと蜂蜜がとろり溶けてるカレールーを使うのがポイントだ。
しかも甘口というこだわりもある!
「結局あれが一番うまいのだ」
まずは玉ねぎ、人参、じゃがいもをカットする。
肉は当然豚肉だ。
これが我が家流なので異論は認めない。
具材を炒めてグツグツ煮たら火を止め、こだわりのカレールーを投入。
みんな、ここ大切なポイントですよ。
カレールーが馴染んだらひと煮立ちさせる。
隠し味にコーヒーを入れて完成だ。
皿に盛られたカレーが光を放っている。
もはやカレーの匂いで失神しそうだ。
「いただきます!」
スプーン山盛りにカレーをすくい一口でパクり。
うっっっまぁああああいぃ!
やっぱりこの味だよ。
やばい、コイツは止まらんぞ!
あっという間に一皿目を平らげてしまった俺は、結果4皿分も食べてしまった。
そして食べ過ぎた事に後悔した。お腹イタイ…。
テレビを見て少し休憩したら、お風呂にお湯を張り久々の湯船に浸かる。
久々の風呂に思わずうーっと唸ってしまった。
やはり風呂は最高である。ほんとに…。
風呂に浸かってしみじみ思う。
普段の暮らしが如何に幸せだったかを。
病気になったから気付くことができた。
そして俺は今転生し、第二の人生を歩む幸運を得た。
「幸せだなぁ…」
エレキの若大将みたい台詞を吐いて、俺の転生初日が過ぎていった。
ジャワやこくまろなどに浮気するけど、
最終的にはバーモント甘口に帰ってくるんです。