いざ異世界へ
「坂井さん。悪い顔してますよ」
もう無理ですー、みたいな表情の神様。
いいや。ここで俺は引かないよ。
「今から転生しても、中世の世界で生きてく自信は無いですよ。これだけ文明の力にどっぷり浸かってたんですから」
「うーん…。確かにそうかもしれませんけど…」
そりゃそうだ。
マンガやアニメじゃないんだからホイホイと異世界に行けないよ。
トイレにウォシュレットがない、風呂もないなんて俺には耐えられません!
「最低限、衣食住はなんとかして下さい」
「めんどくさいですねー」
いや、この要求は飲んでもらう。
ハードな交渉の末、勝ち取った要求が以下になった。
1.実家をそのまま転移させること
2.家の設備が劣化せず、不自由なく使用できること
3.インターネットや通販ができること
4.実家の存在を隠蔽できること
さすがに異世界からの情報発信はNGになったが、そもそもSNSはやってないので問題なし。
隠蔽に関しては魔法を実家に付与するようで、俺が許可した場合のみ実家の敷地内に入れるそうだ。
しかも人間だけでなく、野生動物なんかも対象らしい。
便利だなー魔法。
通販に関しては神様パワーによって商品が家の玄関に届く仕組みだ。
ただ、通販にはちょっとした制約がついた。
「通販ですが、異世界で稼いだお金を日本円換算で購入できるようにします」
「えぇー!つまりニート生活はダメだということですか?」
「その通りですよ!異世界行ったのにずっと家に引きこもるつもりですか!?パツキンネーチャンは!?」
「あっ、そうでした」
こうやって色々とお膳立てしてくれたのに、家に引きこもるのは流石によろしくないな。
色々思うところはあったけど、結果いい神様だったよ。
「当たり前です。神様ですから!」
異世界行きの条件はこんなところかな。
神様、準備オッケーですよ!
「では参りましょうか。坂井さんがどんな英雄譚を紡ぐか楽しみですねぇ。行ってらっしゃい!」
神様はニコニコしながら手を降っている。
いや、俺は英雄になんかなるつもりは無いよ。
なんて言おうとした瞬間、身体が光に包み込まれた。
そして、俺こと【坂井正人】は異世界へ転生した。