天国と地獄
俺は今まさに人生の最終局面を迎えていた。
身体中の痛みがスーっと消えていく。
目の前がいよいよ暗くなってきている。
死のカウントダウンが始まったのだ。
暗闇の中しばらくすると、人生名場面集という名の思い出スライドショーがポツンと浮かんできた。
走馬灯、ほんとにあるんだ!
感心していると、[終劇]なるスライドで走馬灯は消え、今度は目を刺すような光に包まれた。
反射的に瞑った目をそーっと開くと、だだっ広い部屋にポツンとひとり立っていた。
ふと足元を見る。
部屋は明るいのに、自分の影がそこにはなかった。
「これ死んだね…、間違いない」
「あーあっ」となどとぼやいていると、如何にもな服装の神々しい青年がスッと目の前に現れた。
「お疲れさまでした、坂井正人さん。仰った通り坂井さんは今しがた死にました。あははっ」
眩しいほどにイケメンな青年、これ神様だなと速攻で理解した。
でもあははって。
でもこんなフランクな神様もいるんだなぁ。
なんて思っていたらあることに気付いた…。
そうコイツが神様ってことはつまり…。
俺の天国or地獄行きの運命が、この場で決まってしまうのだ。
マジで地獄は勘弁!いやホントに地獄に行きたくない!
もはや前世の所業は神様に筒抜けだか、パニックになった俺は何とかして地獄行きは回避しようと考えていた。
「あのー坂井さん。もうあなたの行き先は決まってるんですけど、とりあえず地獄ではないので。ちょっと落ち着いてね」
「あざーす!」
死ぬほど心の中でガッツポーズした。
てかそもそも死んでたわ。
「自分にツッコめるくらいには落ち着きましたかねぇ。では今後のことについて話しましょうか?」
「今後ですか。えーと、天国についての説明ですか?」
「いやぁ……」
「あれ?違うんです?」
「天国っていうかさ…。そのぉ…。まぁその辺も含めてさ。みっちり話そうよ!ね!時間はたっぷりあるし!」
ひきつった顔で必死に笑顔を作る神様。
神様、あんた表情に思い切り出るタイプだな。
そうですか。ええ察しましたよ…
「オレ、天国に行けないのね!」