6話 〜竜の私は旅に出る〜
『……頼みがあるのだ。』
旅に出ようと準備をしていると師匠に声をかけられた。
『いま他の五体の古龍と連絡がとれておらんのだ。何をしているのか調べたいが我はここからあまり動けなくてな。我の代わりに他の古龍を見つけてきて欲しい。』
「師匠の頼みとあらばモチロン! でも古龍たちを探すのは手が空いてる時でいい?」
『構わぬ。それと一応これも渡しておく。』
そう言って渡されたのは人間サイズの私の手のひらに乗るぐらいの丸い玉だった。色は紅く中心に近くなるたび濃くなっているそれは見ていて何やら惹き込まれそうな力があった。
『あまり見ない方が良いぞ。』
「なにこれ? ドラ〇ンボール?」
『封竜玉じゃ。我ら龍の力を封じる宝玉じゃ。』
「ちょっと惜しい……」
『…………』
最近、私が異世界のネタを出しても師匠が綺麗にスルーしてくる件について議論に上げたい。いや、話の腰を折ってる私が悪いんだけども……
「これ、誰に対して使うの?」
『例の龍の子供だ。お主とほぼ同じ存在の奴ならばお主と会う確率も高いであろう。その時に使うのだ。』
「…………殺すの?」
『それはお主の判断に任せる。手に負えないと思った時は、だ。我等は中立の存在、他のものに危害を加えていたのならそれは我等の手で始末をつけなくてはならんのだ。』
「リョーカイです師匠! これでも私も古龍の一人。その責任は私も背負いますよ。」
そう言って私はリュックサックのような所に封竜玉をしまうクルッと回って師匠の方を向く。
この世界に来てから本当に師匠には助かった。最初は急に魔法をぶつけて来るものだからビビったけど、この世界の魔法や経済、歴史も軽く教わり生きていく術を身につけさせてもらった。これはもう親と一緒だね。
父親って呼ぼうかな?あれ、師匠って性別そもそもあるの?男っぽいけど……いや今更お父さんってちょっと恥ずかしいな。
「よいっしょ! と、準備おっけー!」
『……くれぐれも下手なことには「手を出さないこと、でしょ?」……うむ。それと古龍の件、頼んだぞ。』
「会ったら“あの事”伝えればいいんだね? 任して〜!」
そう言って私は周りを見渡した。雲の上に突き出たこの場所にはお世話になった。少し名残惜しいな……
私は崖の端っこに立つと深く深呼吸をする。大丈夫だと思っても少し怖いなぁ。
「それじゃ師匠! 行ってきます!」
『うむ!』
ピョン!と私は雲の海に向かってその身を投げる。私の体は重力にそって下へと引っ張られそのスピードはみるみる加速していく。真っ白い世界の中落ちてゆく感覚だけを感じながら思い返す。今まではプロローグに過ぎない……
ここからが私の本当の冒険!