3話 〜私と恵みと白い竜〜
ポロン…
(ん、うぐぅ……)
頭に音が響き、意識が段々と覚醒してくる。
(痛てててて……)
身体を動かそうとすると全身に激痛が走った。何があったんだっけ?
そうだ!私、アイツらに落とされたんだった!あのオタマジャクシどもめ〜!次会ったら絶対息吹お見舞いシテヤル!!
けど、私どのくらい落ちたんだろう。いてて…身体中痛いよ……
そういえばステータス更新の音が聞こえたような。ステータスオープンッ!
名前 ???
年齢 0歳
種族 竜種 幼竜
固有能力 『黒死咆哮砲』
能力《威圧》《竜鱗》《肉体還元》《鑑定》《飛行補助》new
称号 【受け継ぎし者】
《飛行補助》?空飛べるようになるってこと?とりあえず起動ッ!
パタパタパタ……
おおー。飛べるようになった、なったけど……
遅せぇよッ!!―――――
穴に落ちる前に頂戴!欲を言えば外の景色眺めてた時に寄越してよ!なんで今なん!
あ、もうダメだ……本当に動けない。怒り疲れたぁ。
ポロン…
うぇ?また更新した?
名前 ???
年齢 0歳
種族 竜種 幼竜
固有能力 『黒死咆哮砲』
能力 《威圧》《竜鱗》《肉体還元》《鑑定》《飛行補助》《不屈心》new
称号 【受け継ぎし者】
なにコレ、不屈の心?いや、まだ頑張れって事?はぁ〜?もうやだよー疲れたよー体痛いよー。
………………もう少し頑張ってみよう。
ゆっくりと身体に障らないように起き上がり、トボトボと歩き出す。
(で、出れたあああぁぁぁ〜〜〜!)
見渡すと草木が生い茂り木漏れ日が照らす。
あれから数分歩くと洞窟から出れた。もう少し頑張って良かった〜あのままあそこに居たら野垂れ死にんでた。
あぁ!木の実がある!えいっ。
ドンと体当たりすると木に実っていた赤い木の実が落ちてくる。
《鑑定結果》・・・木竜の恵実
竜が住むとされる北西の山の更に奥に生える木の実。大自然のエネルギーをふんだんに吸収し実った果実。木竜と名前にあるが木竜とは関係ない。実はとても甘く、魔力の回復にも良い。
ふむふむ。大丈夫そうだね!じゃあ頂きま〜す!
ムシャムシャ…
甘ッ!めっちゃ甘ッ!そして美味ッ!!
はぁぁぁ〜〜癒される。この雰囲気!この景色!まさにファンタジーの醍醐味。決めた、私ここに住もう、もうここから動かないからよろしく。
とりあえず周りに敵がいないか《気配感知》を使いながら探索する。ついでに大きい草も運んでベッド作ろ。
いや〜、色々あったけど。なんだか全部夢みたい。いや、本当に長い夢だったりして……
どうでもいいか!(ムシャムシャ)
草を敷いた簡素なベッドに寝転がり集めた木の実を食べまくっていた。
あぁ〜〜癒される!!もうあんな洞窟になんて戻らないから!絶対に!
これぞ異世界のんびり生活!このまま暮らしたいわぁ〜。
食料のない暗い場所を歩き、気持ち悪いカエルやオタマジャクシに遭遇したり、追いかけられ穴から落ちたりと色々あったが!過酷な洞窟を抜けてついに着いたココはまさかの理想郷!!
ふふ…これは勝ち確!パッと見《気配感知》に強敵となるような奴はいないし。かなり食料もかなり採ったけどまだまだ沢山ありそうだ。幸せ〜。
ムシャッと木の実をかじったその時、《気配感知》に大きな反応が引っかかった。
なにこれ、凄いデカい!しかも真っ直ぐコッチに向かってない!?ヤバい、ヤバい!
そうアタフタしているうちにその反応は私のすぐ側まで来てしまった。
木々が強い風に煽られザワめく。黒い影が木の奥の方からすごい速さで迫ってくる。そして一瞬のうちにその影は私と重なった。
――――上っ!!
そこには白い真っ白な竜が飛んでいた。私の何十倍ものある体で太陽を覆い隠すくらい大きく、恐らく私なんか一発で踏み潰されて終わりだろう。
あれ、これ夢だよね……?
その竜の瞳は真っ直ぐと私の方を見つめていた。純白の体は見惚れるほどとても美しく、それ以上に“恐怖”という名のものが肌を通り抜けるかのように伝わってくる。
『まさか、これ程早く出てくるとはな……』
重々しく強大でいて、どこか優しさが感じられる声が辺りに響く。
『聞こえるか? 小さき竜よ。ここではなんだ、少し移動しよう。』
白い竜がそう言うとその大きな手が私に迫ってくる。見た目に圧倒され話を聞いていなかった私は現状パニクってます。
ガシッ……
え…うわああああ!
いとも簡単に白い竜に捕まってしまった。
苦しいと思うも大きさが違うおかげか手の中は意外と動けるスペースがあった。急いで手から抜け出そうともがいていると指の隙間から顔だけヒョコと出た。
ほんの数秒の間に雲の上まで来ていた。たまに雲の隙間から覗く地面はごちゃごちゃしていてよく分からなかった。これ、落ちたら死ぬかも……
それから数分経つと雲の上に突き出た岩場が現れた。そこに白い竜は降りると私もそっと降ろされた。
何が何だか未だに戸惑っている私を他所に白い竜は喋った。
『さて、まずは……』
白い竜がそう呟いた瞬間、横から強い衝撃に襲われた。
ヘブッ!と勢いよく飛び地面に転がる。あのオタマジャクシよりも痛い!何がおきたの!?
『やはり……これは避けられんか。あの洞窟から抜け出したら普通はできるのだがな………』
すると、白い竜の横に何やら魔法陣のようなものが現れる。
私はまさか……と予感嫌な予感を感じ急いで身体を横にずらす。
ヒュッ――――
危なッ!
その魔法陣から高速で何かが打ち込まれた。そして私がさっきまでいた場所を見ると地面が抉れたように凹んでいた。
それはおそらく魔法……あるとは思っていたけど本当に見れるとは……素直に喜べない!それが自分に向けられているとッ!!
ヘブッ!
そう怒っているうちにまた横から衝撃に襲われた。痛い……頭も痛いけど思いっきり舌噛んだ………
(もう! 何するのよッ!!)
『………ん?』
声になっていないけど心で叫ぶと白い竜が不思議なようにこちらを見てきた。
『まさか……』
(まさかって何がよ! なんでこんなことスんのよ!)
ムカムカして地面を叩きながら思う。すると、白い竜は驚いたように目を丸くして私を見つめていた。
『貴様…意思があるのか……!?』
(当たり前でしょ! 生きているんだから。)
『そう言う訳では無いんだが……』
何言ってるのよと軽蔑の目でこのドS竜を見る……………ん?いま私の返事に答えた?いや、まさか。私 喋れないし。
(聞こえてる………?)
『聞こえているが………』
あら、聞こえていた。