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第2話 夢の為に物件探しを始めました(6)
僕は振り返りながら彼へと言葉を返した。
「あの、お客様は、この賃貸物件で何の商売をされるつもりなのでしょうか?」と、訊ねてきた。
「えっ、僕ですか?」
「はい、そうです……。どうしても弊社の方でも、お客様がこの物件で何の商売をなされるのか確認をとっておかないといけない事情がありまして……」
「そうなのですか?」
「はい。実はこの物件には……」と。
不動産屋のおじさんが大変に申し訳なさそうな表情と声色で、浮かれ気分でいた僕へと訪ねてきたのだ。
だから僕自身も「はぁ~」と、少しばかり気落ちをした声色で、不動産屋のおじさんへと言葉を返したのだ。
だって彼が今から僕へと告げようとしている台詞の内容が僕自身も大体想像の方がついていたから。自身の肩を落とした様子へと、移り変わるように振る舞いながら不動産屋のおじさんへと言葉を返すようになってしまうのだ。
そう、彼は、多分僕へと、この物件には【条件】……。貸し手から貸主への賃貸契約書の条件の中に。この賃貸物件で使用しても良い商売と、使用を禁止している商売があるのではないかと思う。