夏休みの初日
「海だああああああ!」
「うわ!うるさ!急に叫ぶなよ!それに海なんか教室から見てるだろ!」
「見るのと実際来るのは違うでしょ!ほら!」
「ばか!水かけんな!」
「あははははは!!!」
3時間前、クーラーの効いた部屋でのんびりしていた僕の元へ一件の通知が来た。
『海行こう!今すぐにでも!』
…
『明日バイトあるから疲れたくない』
『泳がないから!』
『なんの為だよ』
『なんか!こう!夏だから!』
こうなったらあいつはひかない。
断っても俺の家まで来て引きずってでも連れて行くだろう。
『分かった。海の近くのコンビニに集合でいいか。』
『あそこね!りょ!』
ーーーーーー
「うへぇ…結構濡れちゃった…」
「…ほら。」
どうせこんな事になるだろうと大きめのタオルを持ってきておいてよかった。
「…ほんとは泳ぎたかったの?」
「ちげぇよ。こんな事になるだろうと思って持ってきたんだよ。」
「お母さん…」
「どっちかって言うとお父さんだろ。
…誰がお父さんだ。」
「冗談冗談。あ〜楽しかった。よし!ご飯食べて帰ろ!」
…ん?…!!!!
「…待て。服が乾くまで。」
「平気!平気!あるいてりゃ乾くから!」
目を逸らす。これで気づいてくれたらいいが…
「なんで目逸らすの〜?こっちむけぇ〜」
確信犯か?こいつは。まぁ気づくわけ無いか…
「…透けてるから。」
「…?…!!!!!!」
「あっ、あはは〜!!ごめんね!しょうもないもの見せちゃって〜…」
…
ほらぁ…すげぇ気まずいじゃん…
あ、さっきのタオル使えばよかったのか…
俺デリカシーねぇなぁ…
遅いけど、ないよりは…
「…これ使え。」
「あ、ありがとう。」
テトラポッドに並んで座っているが平常心保つのも限界だ…
「ね、ねぇ。」
「?」
「海、綺麗だね。」
…こいつは意味をわかってて言ったのか?
だとしたら嬉しいが…まさかな…
ふと空を見上げる。
あぁ…実にちょうどいい。昼にこのセリフはあれかと思ったが、そこにあるなら都合がいい。
「空見てみろよ。月も綺麗だぞ。」
彼女に目をむける。
顔を伏せているが耳が真っ赤なのがわかる。
ここで決めなきゃ男じゃないよな。
「琴葉。俺はお前が好きだ。ずっとずっと前から。今も。もちろんこれからも。」
「ずるいよ…私も、想のことが好き。」
「でも…月が綺麗だなんてキザだね。」
「お前も海が綺麗だなんてだいぶロマンチストじゃねぇか。」
「え?」
やっぱり…こいつはなにもわかってなかったな。
「あ、服も乾いた!」
「じゃあ行くか。」
「初デートだぁ!」
「改めて言わないでくれ。ちょっと恥ずかしいから。」
「…月がきr「だああああああ」
「いきなり叫ばないでよ!びっくりする!」
「お前!どの口が!」
ギャーワーギャー
まだ夏休みは始まったばかりだ。
いっぱいいっぱい楽しもう。