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第6話 悪役令嬢は昔の記憶を思い出す1

ここから暫く過去のお話です。

 私は意識を失い、ある事を思い出した。何故忘れていたの。

 私はフレデリカが10歳の誕生日に、転生していたのだ。私は、転生してからの記憶を全て思い出したのだった。



 ***



 ここは……どこ?私は起き上がり、きょろきょろと辺りを見渡す。

 天蓋付きのベッド。白が基調の調度品の数々。可愛らしい部屋だ。


 私は起き上がり、鏡の前に立った。


「これは……フレデリカ?」


 私はなんとなくそう思った。私は16歳の誕生日の朝……階段から転げ落ちて……。

 そして気がついたらここにいた。私の中の記憶が、この人物は乙女ゲーム「私は翠玉を愛す」に出てくる悪役令嬢のフレデリカ=ヴァリアーヌだと言っている。


 姿は幼いが、面影はある。つまりゲームよりだいぶ前のフレデリカになったと言うことね。これがフレデリカなら前世の私は……残念な結果となって、ゲームのキャラに転生したということだ。


 しかも、悪役令嬢。

 しかし悲しむことはない。私はこのゲームなら一番なりたかったのは、彼女なのだから。年月が、ゲームより大分前だけど。


 私は着替えて、部屋を出た。

 するとメイドと会った。


「お嬢様、おはようございます。今日はお早いですね。お着替えもご自分でなされて」


「おはよう。まっ、まあ着替えくらい一人で出来るようにならないとね」


「今日で10歳ですものね。流石です。おめでとうございます、お嬢様」


「ありがとう」


 そうか、今日は10歳の誕生日なのか。アルフレッドとは、確か10歳の誕生日に出会ったはず。だとしたら、これから出会うのね。


 私はワクワクした。フレデリカの従者で、このゲームで一押しのキャラ。攻略キャラではないので、攻略の仕方は分からないが。


 アルフレッドの事を考えていたら、寝起きでぼーっとしていた頭が冴えてきた。

 私は食堂の扉を開けた。そこにはお母様と妹がいた。


「おはようございます。お母様、マーガレット」


「おはよう、フレデリカ。10歳の誕生日おめでとう」


「おはようございます、お姉様。お誕生日おめでとうございます」


 私は席に着き、朝食を頂いた。暫くすると、馬車の音が聞こえた。きっとお父様がアルフレッドを連れてきたんだわ‼︎


 私は席を立ち、玄関へと走って行った。


「お父様っ‼︎」


 私は馬車から降りたお父様に抱きついた。

お父様、アルフレッドを連れてきてくださってありがとうございます‼︎

 私は心の中で、お父様に感謝した。

 ーーで、アルフレッドはどこどこ?


「ただいま。ははっ、フレデリカはお転婆だな。やはり従者を付ける必要がありそうだな。さあ、降りておいで」


 すると、一人の少年が降りてきた。茶色の髪に真紅の瞳。あどけない顔立ちだが、私には分かる。彼は昔のアルフレッドだ。私が10歳と言うことは、彼は12歳だ。


 彼はお父様の後ろに隠れている。よく見れば服もボロボロで、肌にはいくつか傷がある。全体的に土などで汚れている。

 一体誰がアルフレッドをこんな風に……。許すまじ‼︎


「彼の名はアルフレッドと言う。とある国で色々あってな。身寄りがないので、私が引き取ることにした。フレデリカも、もう10歳だ。専属の従者を付けようと思う。彼はとても優秀だから、色々勉強になるだろう。仲良くしてやってくれ」


「ありがとうございます、お父様。勿論ですわ。よろしくね、私はフレデリカよ」


 私はアルフレッドに手を差し出した。しかし、彼は隠れたままだ。


「?どうしたの?」


「私は、その汚れてますので……」


 ああ、成る程ね。私を汚したくないと。そんなの気にしなくていいのに。

 私はアルフレッドに抱きついた。


「⁈」


「おっ、お嬢様⁈」


 お父様も、アルフレッドも驚いている。まあ、そりゃそうよね。


「これで私にも、その汚れがついたから一緒よ。ふふっ、こんなのは後で洗えば良いんだから、気にしないの‼︎……さあ、これで私と握手してくれるわよね」


 私は再び手を差し出した。


「はい、お嬢様」


 アルフレッドは私の手を取り、握手した。




 私たちはまず、お風呂に入ることにした。

私がお風呂から出て着替え終わると、外には、既に風呂を済ませたアルフレッドが待っていた。

 いつもの燕尾服だ。ふふっ、やっぱりアルフレッドと言えばこれよね。


「お嬢様、お部屋で髪の毛を乾かしましょう」


「ありがとう」


 私は魔法で熱風を送るドライヤーみたいなものと、櫛で髪の毛の手入れをしてもらった。少しぎこちない手つきだが心地いい。

私は鼻歌を歌った。


「何か良いことがございましたか?」


「ふふっ、貴方に会えたことよ」


「⁈」


「これからよろしくね」


「はい、永遠にお仕え致します」


 こうして私たちはめでたく主従関係となったのだった。




「「「お誕生日おめでとう‼︎」」」

「「「おめでとうございます」」」


 夜になると、私の誕生日パーティーが開催された。家族や、親戚、そして屋敷に仕える者皆が私の10歳の誕生日を祝ってくれた。


「皆、ありがとう‼︎」


 パーティーは大いに盛り上がった。


 ふふっ、今年の一番のプレゼントは、アルフレッドを私の従者にしてくださったことよね。これから毎日アルフレッドと一緒だと思うと……ヤバイ、にやけた顔が戻らないわ。


 私は怪しい顔をしながら笑っていた。


 そこへ一人の男の子がやってきた。


「やっ、やあ。フレデリカ、誕生日おめでとう」


「あら、イーバン」


 彼は従兄弟のイーバン。今は幼いが、なんとなく分かる。


「ちょっと話があるんだけど……いいかな?」


「?ええ」


 私たちは庭に出た。イーバンはなかなか話し始めず、モジモジしている。……なんか攻略キャラのイーバンとはだいぶ違うような……。まあ、6年前だしそういうこともあるか。


「フッ、フレデリカ‼︎」


「はっ、はい」


 なんかこっちまで緊張が移ってしまったわ。


「好きだ‼︎」


「⁈」


「オレと結婚してほしい‼︎……すぐには無理だが、まずは婚約者になってほしいんだ‼︎」


 なっ、何を血迷ったことを……。


「オレは、フレデリカかマーガレットのどちらかと、将来結婚する事は決まっている。オレは昔からフレデリカの事が好きだった。今日、ヴァリアーヌ侯爵に婚約したいと言おうと思っているんだ。だが、その前に君にオレの思いを伝えたくて……。勿論受けてくれるよね?」


 何を言っているんだ。勿論?そんなことあるわけないじゃない。自意識過剰すぎよ。私が好きなのは、アルフレッドだけなのよーー‼︎


「イヤよ」


「えっ?」


 イーバンはとても驚いた顔をしている。いや、私が断るって発想はないわけ?


「だから、イヤだって言っているのよ。私はイーバンの事は、従兄弟以上には見られない。イーバンはマーガレットと結婚した方が幸せになれると思うわ」


 だってマーガレットは、貴方のことが好きなんだから。


「じゃあ、私は先に中に戻るわね」


「あっ……」


 私はそう言い、後ろに控えていたアルフレッドと共に中に戻った。


「お嬢様、よろしかったのですか?」


「何が?」


「イーバン様の求婚を……」


「ああ。私はイーバンの事は恋愛対象として、見ていないのよ。好きでもない男と結婚なんてイヤよ」


「そうでしたか」


「私にはアルフレッドがいれば、それで十分幸せよ」


「勿体ないお言葉です」


 こうして私の10歳の誕生日は、幕を閉じた。

 この出来事がきっかけで、イーバンが女たらしになると知るのは、もう少し先の話である。

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