表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/40

第4話 悪役令嬢はゲームの内容を思い出す1

「んっ……」


 目を覚ますと、私は自室で寝ていた。空が明るい。

 そうか、私プロポーズされて……。パーティーは夜だったから、今は次の日の朝かしら?

 しかし、相手が身分が上の人だから遠回しに断ったつもりだったんだが、まさかの両想いと勘違いされた。


 私はどう言っていたら良かったのか……。今更考えても後の祭りである。


 左手を誰かに握られている感覚がある。左を見ると、アルフレッドがいた。


「アルフレッド……」


「お嬢様、おはようございます。お加減は如何ですか?」


「ええ…あまり良くないわ……」


 殿下にプロポーズされて気分は最悪よ。そう言えば、婚約‼︎結局どうなったのかしら⁈


「アルフレッド‼︎その……殿下との婚約って……」


「おめでとうございます、お嬢様。殿下とのご婚約は無事、成立致しました。これでお嬢様は未来の王妃です。このアルフレッド、お嬢様が国民皆が憧れる存在になる事、とても誇りに思います」


 やっぱり、成立してたのね……。そんな気はしてたわ。答える前に気絶したけど、向こうは私も殿下のことが好きと勘違いしているしね。


 でも、婚約しちゃったものはしょうがない。なら、婚約破棄を目指すまで。大丈夫、これは方法が分かってるんだから。こっちの方が簡単よ‼︎

 まあ、婚約破棄イベントが学園に通い始めて一年経った時だから……一年二ヶ月後か。長いけど、仕方ない。


 そうと決まれば学園に通う前に、ゲームの内容をしっかり思い出し、書き出してみる必要があるわね。

 書き出してみることで、気づくこととかもあるかもしれないし。それに情報を整理しといた方が良いわ。


「アルフレッド、今日の予定は?」


「本日は特に何もございません。安心してお休みください。明後日は王宮にて婚約発表パーティーがあります」


「そう」


 明後日か……。気が重いな。

 よし、今日は部屋に引きこもり、ゲームの情報を整理しましょう。


「アルフレッド、私は今日部屋でやることがあるから誰も入れないでね」


「畏まりました。では、食事の時間になりましたら伺いに参ります。して、朝食は如何なさいますか?」


「軽くでいいわ。後で部屋に持ってきてくれる?」


「はい、畏まりました」


 こうして私はゲームの情報を整理する為に、紙に纏めることにした。





 私はアルフレッドの作った朝食を食べなが ら、紙にペンを走らせた。


『悪役令嬢が婚約破棄される為の方法』


 私はまずは日本語でタイトルを書いた。この内容は日本語で書いた方がいいだろう。他の人に読まれる心配もないしね。



 ここは乙女ゲーム『私は翠玉を愛す』

 宝石シリーズと呼ばれるゲームの第一弾で、エメラルド色の瞳を持つ王族が統治する国、エメラルディアが舞台のゲームだ。


 期間はエメラルディア学園に入学してから、卒業式まで。基本的には16歳で入学し、18歳で卒業する。

 学園に通うのは二年だが、ゲームの期間は約一年。先輩キャラが攻略対象にいるからだろう。先輩の卒業式がゲームの終わりになっている。

 暦や時間などは分かりやすく、日本と同じ仕様になっている。これは本当に有難い。


 因みに現在は入学式の二ヶ月前で、ゲーム開始時より前の時期である。


 主人公はリリアナ=コーネリウス。茶髪碧眼の美少女。田舎で育った町娘だったが、実は父親がコーネリウス伯爵だという事が発覚し、伯爵に引き取られ、伯爵令嬢となった。

 そして、伯爵令嬢として教養を高める為に学園に入学する。引き取られたのが入学式の後なので、5月から入学する。

 途中から入ってくる者は珍しいので、皆に注目される。そして、その持ち前の明るい性格と、愛くるしい容姿で皆を虜にし、次々と攻略キャラをメロメロにしていくのだ。

 皆さん序盤から結構好意的なんだよねー。


 まあ、好感度上がりやすいのは婚約破棄がしやすくなって助かるんだけどね。


 因みに神聖魔法を使える数少ない貴重な人物。

 神聖魔法とは、文字通り奇跡のような力。例えば、瀕死の人を一瞬で全回復したり、魔族に対してかなり有効な攻撃が出来たり、呪いを解いたり。

 確か神聖魔法を使える人は、人に好かれやすいっていう副効果があるのよね。


 ……主人公に関してはこんなところかしら。


 次は私ね。主人公のライバルである悪役令嬢、フレデリカ=ヴァリアーヌ。

 ヴァリアーヌ侯爵家の長子として生まれ、蝶よ花よと大事に育てられてきた。ピンクの長い髪に紫の瞳。とても美しい侯爵令嬢だ。

 プライドが高く、侯爵家の令嬢たる者こうあるべきだ‼︎という気持ちが高く、常にその理想の自分になる為に努力している。

 いきなり伯爵家の令嬢になった主人公は、教養もマナーもちゃんと身についていないので、立派なレディにする為に厳しく教える。

 主人公が神聖魔法の使い手と知ると、嫉妬するが、あなたは国にとって重要な人なのよと主人公に言い、更に立派なレディにすべく厳しく指導する。


 ーーあら、改めて文に起こすと良い奴じゃない、フレデリカ。お節介焼きさんなのね。


 しかし、殿下が主人公に惹かれ始めると、殿下のことが大好きなフレデリカは、主人公に冷たくしてしまう。結果的にそれが原因で婚約破棄になる。

 因みにイーバンが主人公に恋をすると、妹の為に恋を阻止する為に頑張る。その結果、殿下に嫌われ婚約破棄になる。


 フレデリカ……‼︎私は文に起こしながらウルっときてしまった。

 あなたはそんなに殿下のことが……‼︎

 侯爵令嬢としてのプライドが高く、高潔なフレデリカ。主人公が特別な存在と知って嫉妬をしても、国の為に主人公を指導する。

 でも、殿下の心を奪われ、今までのように接する事が出来なくなる。

 妹が悲しむ姿を見たくない一心で、頑張るフレデリカ。


 完璧なフレデリカの弱点は、恋と妹なのね。


 誰よ、フレデリカを悪役令嬢なんて言った奴は‼︎めっちゃ良い奴じゃないの‼︎


 でもごめんなさいね、フレデリカ。私はアルフレッドが好きなの。今は私がフレデリカなんだから、好きに生きさせてね。


 私は心の中で、ゲームのフレデリカに謝った。


「お嬢様、昼食の時間になりましたが、如何致しましょう?」


 扉を叩く音がして、アルフレッドが呼びにきた。私は、書いたノートを引き出しにしまい、席を立った。


「下でいただくわ。呼びに来てくれてありがとう」


 ずっと机に向かっているのも疲れるし、一旦休憩しましょう。

 私は部屋の外に出た。すると、アルフレッドは屈み、私の顔を覗き込んだ。


「お嬢様、如何されましたか?目が少し赤いですが」


 私は、ドキッとした。

 近い近いーー‼︎アルフレッドの顔をそんな近くで見れるのは嬉しいけど、私の顔も近くで見られてるのよね。恥ずかしいよーー。


「さっき読んだ本に感動して、ちょっと泣いただけよ。大丈夫だから」


 私は恥ずかしさに耐えられず、一歩下がった。アルフレッドは優しく微笑み、姿勢を正した。


「お嬢様は本当に素直な心をお持ちですね。ですが少し、お嬢様を感動させた本に嫉妬してしまいます」


「なっ、なに言ってるのよ、アルフレッド」


 私は機嫌良く、アルフレッドと食堂へ向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ