第22話 悪役令嬢は学園に入学する3
……今、なんて言った?
私は去っていくリリアナを見ながら思った。小声であったから自信はないが「……変なところはなさそうね」と私には聞こえた。
それってつまり、私がゲーム通りの悪役令嬢か確認したということ?あの人も転生者なの?
私は顔色が悪くなり、嫌な汗が止まらなかった。
確かめなきゃ。でもどうやって?なんて言えば良いの?下手なことを言うと私が転生者だとバレてしまう。
私はどうして良いのか分からず、ただ彼女の背中を黙って見送った。
それから私たちは式のために講堂へと行った。でも、私の頭の中はリリアナのことでいっぱいで正直何も覚えていない。
「……カ。フレデリカ」
「えっ?」
「ぼうっとして大丈夫?式はもう終わったよ。……体調でも悪い?」
「シルヴァント様。申し訳ございません。今朝からあまり調子がよろしくなくて。保健室で少し休んできますね」
「付いて行こうか?」
「大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
私は一礼し、保健室へ移動した。
取り敢えず少し休憩しよう。なんかどっと疲れたわ。
あの子が入学するなんて、そもそもあり得ない。何が起きているの?私が転生して、キャラ同士の関係性が若干変わってしまったから?
保健室に着き、扉に手をかけると中から声が聞こえてきた。ゆっくり音を立てずに扉を開き中に入る。先生はいないようだ。ということは、ベッドで休んでいる人と付き添いの人の話し声かしら?
ベッドは一つずつカーテンで仕切られていて、使用中のところは閉められており、見えないようになっている。
私は空いているベッドに行き、横になった。
「きゃあっ……」
ん?
隣のベッドから悲鳴が聞こえた。今の声は、リリアナ?
私は耳を澄ませ、隣の会話を聞くことに集中した。
「そんなに驚くことないだろ?」
「でっ、ですが……」
「変わった女だな。不思議な色をしている」
「いっ、色ですか?」
「ああ……。お前は普通の令嬢とは違う。そして、変わった性質もしている。とても興味深い」
「はっ、はあ」
レイニー先輩とリリアナだ。保健室でこの組み合わせって……。あれだ、二人の初めて出会うシーンだ。
リリアナは慣れない学園生活で、立ちくらみを起こし保健室で休むことにした。保健室に行くと、カーテンが開いてて、レイニー先輩がベッドで寝ていた。リリアナはカーテンを閉めた。そして隣のベッドに移動しようとしたが、先輩の綺麗な顔に見惚れて、思わず髪を撫でてしまう。
すると、先輩は寝ていなくて行動の一部始終筒抜けだった。先輩は目を開けて、リリアナを押し倒す。
先輩は、噂になっていた庶民出の見目麗しい季節外れの入学生だと分かっていたのだ。それでどんな人か気になり、このような行動に出た。
確かにゲームでは、主人公が入学する前から庶民出の見目麗しい女生徒が入学すると話題になっていたって記述があった。
だとしたら入学が早まった彼女の情報を、在校生内で噂になっていた可能性はある。
そして、朝うちのクラスに現れた時も騒がれていたし、色々短時間の間にさらに噂になっていたのかも。学校で良い子ちゃんの先輩だけど、庶民出の奴なら本性現しても大丈夫かもしれない。自分を見せても離れないかもしれないと淡い期待を持って、主人公をからかってやろうと押し倒して見るのよねー。
そして先輩は、主人公の頬に触れて不思議な魔力を感知する。そう、神聖魔法の力を。
先輩はこの時、神聖魔法とは気づかないが、ますます主人公に興味を持つようになる。
これがゲームでの二人の出会いだ。
入学時期がズレているのに、早速攻略キャラとの出会いイベントを起こすとは……リリアナ、恐るべし。
私はそのままこのイベントを見守るべく、静かに待機していた。
「だけど、あいつ程じゃないな」
「「はっ?」」
おっと、いかんいかん。つい、うっかり。
私は自分の口を手で押さえ、静かに呼吸をした。……多分バレていないはず。
「お前の魔力には興味があるが、それ以外は興味がわかないな」
「えっ……あの」
「あいつの方が面白い。お前も面白いかと思ったが、どちらかというと俺に似ているな」
……これは、どういう展開なんだ?初めはゲーム通りだったのに、途中から先輩が逸れてしまった。
「あいつって……」
「フレデリカ=ヴァリアーヌだよ。16歳まで相手が出来なきゃ良かったんだがな。シルヴァント王子殿下と婚約しちまったから諦めなきゃなと、思ってはいるんだがな。そんな時にお前が現れた。……でも、やっぱりフレデリカより好きになれる気はしないな」
「なっ……。しっ、失礼な人ですね‼︎」
リリアナは起こった声をあげ、勢いよく保健室を出て行った。
まさかの展開。出会いのシーンで、フラグが折れるなんて。しかも、その理由が私。
……これは、私が転生したせい?
リリアナの入学も、リリアナと攻略キャラとの関係も私の存在で変わってしまった?
だって、リリアナは恋愛チートなんだよ‼︎私如きの存在なんて……。
なんでよ。どうしてもっと興味沸かないのよ、レイニー先輩‼︎
じゃっ、じゃあ……婚約破棄は?
リリアナは殿下を攻略出来るの?
私は転生してからの六年が、思わぬ程大きな歪みを作ってしまったことに、今更ながら気づいたのだった。




