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第2話 悪役令嬢は婚約回避を試みる2

 暫くするとイーバンがやってきた。

 私の従兄弟でグランソワ叔父上の息子。うちは二人姉妹で跡継ぎがいないから、どちらかと結婚して家督を継いでもらう予定なのだ。


 ゲームでは妹のマーガレットと婚約する予定だが、私に好意を寄せているってどういうことだろう。妹の婚約者に好意を持たれても、迷惑以外何者でもない。

 でも、私の記憶だと妹はイーバンに好意を寄せていて、イーバンも満更ではなかった気がしたのだが。アルフレッドの勘違いかしら。


「御機嫌よう、イーバン」


「やあ、フレデリカ。お誕生日おめでとう」


 そういい、イーバンは大きな花束を私に手渡した。


「ありがとう、イーバン」


「今日は一段と綺麗だよ。僕は君の美しさをずっと眺めていたいくらいだよ」


 イーバン=ヴァリアーヌ。次期ヴァリアーヌ侯爵家当主になる予定の者。

 私の婚約後すぐに妹の婚約者となる。

 明るい黄色がかった茶色の髪と瞳。髪は癖があり跳ねている。明るく皆に好かれるタイプだが、軽い。女性を口説く=挨拶みたいなやつだ。

 それが主人公に出会って、初めは興味本位にからかっていたが、次第に本気になっていくという。

 主人公にイーバンを取られてショックを受けている妹を見て、フレデリカは主人公にキツくあたる。

 このルートでも婚約破棄は可能だが、それでは妹が悲しむ。それは嫌だ。


 なのでイーバンには是非とも妹と結婚して、家督を継いでもらいたい。


「そういう、歯の浮いたセリフは妹だけに言ってあげてよね。いい加減フラフラするのは止めたら?一途になるのもいいものだと思うわよ」


「……そう、だね。まあ、考えてみるよ」


「そう?なら良かったわ」


 あら、意外に素直ね。


「今日の誕生日パーティーって…その……殿下と」


「なんかそう言われてるわよね。私だって恋愛したいのに、なんで……」


 しまった。殿下との婚約を嫌がるなんて、侯爵家令嬢としてはいけないこと。軽々しく人にそんな姿を見せていいわけがない。


「えっと、もうすぐ殿下とも一緒に学園に通うし、そこで仲良くなって恋が出来るかもしれないわね」


 私は慌てて言った。ふぅー、危ない危ない。


「恋か……。恋って良いものだよね」


 イーバンは頬を赤らめながら言った。

 いきなりどうした⁈イーバンは既に恋をしているってこと⁈


「そっ、そうね……。でもあなたはラッキーよ。マーガレットと恋が出来るんだから」


「マーガレットと?」


「えっ?だって、私が殿下と婚約したらあなたは私の妹のマーガレットと婚約するんじゃないの?」



 しーーーーん



 えっ⁈私何か間違ったこと言ったかしら⁈

私は冷や汗を垂らしながら、辛い沈黙に耐えたのだった。


 暫くすると、扉をノックする音がした。


「お嬢様、おやつをお持ち致しました。入ってもよろしいでしょうか?」


「ええ、良いわよ」


 たっ、助かったーー。なんかよく分かんないけど、変な沈黙が続いちゃって辛かったのよね。

 私が返事をすると一礼し、アルフレッドがおやつを持って入ってきた。


「お待たせいたしました。今日のおやつは、アップルパイです」


 目の前に置かれたアップルパイ。シナモンとバターの香りが鼻をくすぐる。切り分けられた断面からはゴロッと大きな林檎がたくさん入っているのが見える。そして、アップルパイの横にはバニラアイスが添えられていた。


 これがゲームで度々出てきた、アルフレッドの手作りお菓子なのね。大好きな人の手作りお菓子を食べれるとか、最高すぎるでしょ‼︎


 私は嬉々として、アップルパイを食べた。

うん、美味しい。流石アルフレッド。


「とっても美味しいわ、アルフレッド。流石私の自慢の従者ね」


「お嬢様、光栄でございます。お嬢様にそう言っていただけることが、私の一番の喜びです」


 アルフレッドは深々とお辞儀した。


「そう言えばイーバン様は、今日はどのようなご用件で?本日は、お嬢様の大切な誕生日パーティー。そのような日に重要な要件があると仰いますので、お時間を用意致しましたが」


 そう、今日の主役である私は色々準備がある。パーティーは夜からだが、そろそろ支度をしないといけない。昨日急にイーバンから連絡があったから時間を設けたとアルフレッドが言っていたが、一体なんの用事なんだろうか。


 私とアルフレッドが見ていると、イーバンは深呼吸をして話し始めた。


「オッ……オレは……、その……けっ……結婚……」


「ああ‼︎マーガレット様に結婚を申し込みたいと言うことですか。イーバン様はこのヴァリアーヌ家の家督を継ぐ者。マーガレット様との結婚は至極当然。しかし、どうプロポーズしたらいいか、お悩みなのですね。それで、お嬢様にご相談を」


「えっ……ちが……」


「まあ、そうなの⁈そうならそうと、早く言ってよー。マーガレット凄く喜ぶわよー♪プロポーズね。……なんて言ったら喜ぶかしらね。アルフレッドどう思う?」


「そうですね……」


 アルフレッドは顎に手を添えて考えている。ふと、何か思いついたようで、アルフレッドは私の前に跪き、私の手の甲にキスをした。


「フレデリカ、好きだ。ずっと前から想っていた。オレと結婚してほしい」


 アッ……アルフレッド⁈いっ、今私とけっ……結婚したいって⁈私の事呼び捨てにして、しかもオレ⁈


 私は赤面し、色々ビックリしすぎて頭が混乱したのだった。

本日、後1話投稿予定です。

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