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第1話 悪役令嬢は婚約回避を試みる1

 目を覚ますと、私は見知らぬベッドで寝ていた。そして目を覚ました瞬間に、理解出来た。


 私は悪役令嬢、フレデリカ=ヴァリアーヌになったのだと。



「やっ、やったあーー‼︎」



 私は飛び起き、ガッツポーズをした。



 前世の私は、普通の女子高生だった。そんな私の趣味は、乙女ゲーム。最近プレイしていたゲームは『私は翠玉を愛す』と言う異世界学園ものの乙女ゲームだ。

 まあまあ人気のゲームだったが、皆口を揃えて残念だった点をあげていた。

 それはライバルキャラの悪役令嬢フレデリカの従者であるアルフレッドが、攻略キャラじゃなかった点だ。

 本当にカッコよくて、素敵なアルフレッド。

 でも、彼は攻略対象外。本当に分かってない。彼を攻略キャラにしないなんておかしいわ。

 彼が攻略キャラだったら、もっと人気が上がっただろうに。


 フレデリカは、ヴァリアーヌ家の侯爵令嬢で、メインキャラの王子殿下の婚約者である。主人公が彼のルートに行くと、フレデリカは婚約破棄をされる。

 そして婚約破棄されたフレデリカは、国外追放される。勿論、従者であるアルフレッドも一緒だ。


 私は、フレデリカが羨ましくて仕方がなかった。

 だから、目が覚めてフレデリカになったと知った時は、すごく喜んだ。しかし、私は何故フレデリカになったのか……。


 確か私は16歳の誕生日の朝、階段から転げ落ちて……意識を失った。

 もしこれが転生だとすると、前世の自分があの後どうなったかは……想像したくないけど、まあ、そういうことなのだろう。

 それは辛い。凄く辛い。私はあの平穏な日常が好きだった。そりゃ、たまには刺激的なことを味わってみたいとは思った。

 でも、友達と遊んだり、好きなゲームしたりと楽しかった。


 やばい……思い出してたら涙が出てきちゃった。


 でも、大好きなアルフレッドの主人になれたのだ。折角の第二の人生、楽しまなくちゃね‼︎

 是非とも殿下に国外追放されて、愛の逃避行を……。


 ってあれ?今ここはいつなんだっけ?私は頭の中の記憶を辿った。

 はっ‼︎今日はゲームより前の時期で、学園に入学する前の、フレデリカの16歳の誕生日の日だ。

 確か、ゲームでフレデリカは16歳の誕生日に殿下と婚約したと言っていた。

 つまり、今日殿下にプロポーズされるということだ。


 ということは、国外追放待たなくてもアルフレッドと恋に落ちることが可能かもしれないって事⁈なら、婚約回避するしかない‼︎


 この婚約が成立しなければ、きっと私は暫く誰かと婚約したりはしないだろう。その間にアルフレッドを攻略する。

 攻略キャラじゃなかったし、どうしたらいいかよくわかんないけど兎に角頑張る。

 ゲームのアルフレッドは、本当にフレデリカの事を大切に思っていたし、脈なしではないはず。その為にも、今日の婚約はなんとしても回避しなければ……‼︎


 私は意気込んで拳を握りしめた。



 私が意気込んでいると、ドアをノックする音がした。


「はっ、はい」


「お嬢様、入ってもよろしいでしょうか?」


「えっ、ええ」


 私はドキドキして言葉につかえた。

 アルフレッドだ。あの扉の向こうに愛しのアルフレッドがいるのだ。


「おはようございます、お嬢様」


「おはよう、アルフレッド」


 私は緩んだ顔を、なんとか元に戻し答える。あぁあああーー‼︎愛しのアルフレッドが目の前にいる。顔がにやけてしまうぅうううーー‼︎


 茶色の髪に真紅の瞳。髪は襟足が長い。身長は180cmないくらいで、すらっとしたシルエット。燕尾服がとてもよく似合っている。


「16歳のお誕生日おめでとうございます。お嬢様のお世話を始めて今年で6年。こんなに立派になられて……。アルフレッドは大変嬉しく思います。今日は一段と暖かくなるようですよ。お天気も良いですし、素晴らしい誕生日になりそうですね」


「ありがとう。貴方に一番にお祝いの言葉を貰えてとても嬉しいわ」


「一番……。もっ、申し訳ございません、お嬢様‼︎お嬢様は本日シルヴァント王子殿下とご婚約をされるのに、私などが先にお祝いの言葉を述べてしまい……」


 私はアルフレッドのところへ駆け寄った。


「アルフレッド。何を言っているの。私は貴方に、一番に祝ってもらえて凄く嬉しいわ。一番近くにいた貴方に。これからも、私の側に居てくれるわよね?」


「勿論でございます、お嬢様。不肖このアルフレッド、どこまでもお供致します」


 ああーー、カッコいいわアルフレッド‼︎

 このまま私と愛の逃避行してと言いたいくらい。


 するとアルフレッドは私の目の前にきて、肩に手を置いた。上を見上げると優しく微笑んでいる。


「お嬢様。今日はどうされたのですか?お召し替えは絶対に手伝わせないと言われて、私が来る時にはいつも着替えておいでなのに。今日はこのままお手伝いしてもよろしいのですか?」


 アルフレッドは顔を耳元に近づけてそう言った。


「だっ、ダメよ‼︎今から着替えるからちょっと外で待ってて‼︎」


「わかりました」


 アルフレッドはくすりと笑い外へ出て行った。

 なんなの今の⁈心臓に悪すぎでしょ‼︎確かにゲームのアルフレッドも、たまに学園で遭遇した時にお茶目なこと言ったりしてたけどーー。

 フレデリカには、こんなこと言うの⁈

 どうしよう、ドキドキし過ぎて困っちゃう。


 私は顔が火照っていくのを感じ、両手で顔を抑えたのだった。



「おまたせ」


 私は火照る顔を手で扇いで、さっさと支度を終え、扉を開けた。


「お嬢様、今日のお召し物もよくお似合いです」


「ありがとう」


「では、食堂へ向かいがてら本日のスケジュールをお伝え致します。朝食後お勉強をし、昼食後に従兄弟のイーバン様が遊びにいらっしゃいます。その後パーティーのお支度をしていただき、夜はお嬢様の誕生日パーティーになります」


「わかったわ」


 従兄弟のイーバンか……。彼も攻略キャラなのよね。そう言えば彼のルートでも、フレデリカは邪魔して、殿下はその意地悪な姿を見て婚約破棄してたわね。どう対応したらいいかしら。


「お嬢様、差し出がましいかもしれませんが、イーバン様にあまりお優しくしない方がよろしいですよ。イーバン様はフレデリカ様にも好意を寄せています。イーバン様はご存知の通り、恋多きお方。お嬢様は今宵、殿下とご婚約なさいます。マーガレット様の為にも、イーバン様に過剰な期待をさせるのはお可哀想です」


 えっ⁈イーバンってフレデリカの事は従兄弟としか思ってなかったはず。なんで?ゲーム開始前はそうだったの⁈

 確かにイーバンは軽いやつだったからな。一時的に好意を持ってたってこともありえるのかもしれない。まあ、好意を持たれても困るし、注意はしないとね。


「ありがとう、アルフレッド。気をつけるわね」


 私は朝食を済ませ、勉強をする為に部屋に戻った。


「お嬢様そこ、違います。そこは……」


 私の勉強はアルフレッドが見てくれていた。アルフレッドはとても優秀で語学に歴史、なんでも出来た。運動も得意でなんでも完璧にこなす。なんでうちの従者やっているのかと不思議に思うくらいに。


 ううう、顔が近くて勉強に集中出来ない。髪の毛サラサラだし、まつ毛長いなー。なんか良い匂いもする。香水かな?

 私はアルフレッドから漂ってくる良い匂いを嗅いでいた。


「?どうしましたか、お嬢様」


「えっ⁈いや、その……アルフレッド、良い匂いがするなって」


「そうですか?」


 アルフレッドは首を傾げながら腕の匂いを嗅いでいる。するとアルフレッドは私の髪をひと束すくい、口元に寄せた。


「あっ、アルフレッド⁈」


「お嬢様のが良い匂いがしますよ。このピンクのサラサラな髪も、紫の瞳も美しい。お嬢様より綺麗な人は、この世に存在いたしません」


 私は恥ずかしくなって、頬を真っ赤に染めた。その後の授業は全く頭に入らなかった。

というか、これから先アルフレッドに勉強を教えてもらって頭に内容入るのかな?ドキドキし過ぎて授業にならない。

 でも、アルフレッドの側に一秒でも長くいたいから家庭教師を他の人に変えるつもりはない。

 私の成績が落ちれば、アルフレッドが怒られてしまう。ちゃんとしっかりして、勉強に集中出来るようにならないとね。


 私は鼻息を荒くして、拳を握った。

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