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ああ、私はただのモブ。  作者: かりんとう
初等科5年生
96/229

女は恐ろしい

宰相死亡、メイデン子爵家火事などの不幸続きの中でもヒロインちゃんは変わらない。

それどころか彼女はラッキーガールだ。




(あの内務大臣が彼女を養女にするなんてね……)


権力が欲しい方同士仲がよろしいことで。


「きっと、自分の株を上げるためよ。まさか彼女を選ぶなんて、そんな危ない橋を渡る方とは思っていなかったんだけど……」


「それにしても内務大臣様、余計なことをしてくれるよね。ますます、あの女が調子に乗るだけじゃないか!」


マリアとシャルルもため息をつきながら言い、机をバンと叩いた。


まさかそんなことを、そういう反応が多数……彼女に無理矢理引き入れられたメンバーはこれを好機と派閥から抜けたりと混乱が続いた。

混乱は学園のみではない、王宮内もだ。まとめ役の宰相が居なくなり、今まで国王派、反国王派、中立派と明確に分かれていたモノが却って不透明なものとなった。


「危ない橋を渡るって事はそれほどのなにかを起こそうとしてるってことでもないのかな?」


ジスト=メルサイユ、クラスメイト兼攻略対象の1人で攻略対象達の中でもあからさまに彼女の事を疎ましく思っている人だ。


「ジスト様、危ない橋とは?」


「そんなの僕に分かるわけ無いじゃないか?……っと、噂をすればってヤツじゃないか。」


ジスト様が嫌そうな眉を潜めながら見ている方を向いてみると、そこにはヒロインちゃんの姿。

公爵家の養女になったおかげか趣味の悪いモノをつけたりすることはなくなったが、彼女の曲がった性根までは変わっていないのだった。


「あら、王女殿下お久しぶりですわね。」


あからさまにこちらを侮っている目、こうもあからさまだと逆に清々しくも見えてしまう。


「お久しぶりね、バードミル公爵令嬢。今日はずいぶんと“お友達”が少ないのね……」


いつもはゾロゾロとあの某医療ドラマのように引き連れている“友達”の姿が無いので、いい加減彼女にうんざりとしていた私は内心ざまあみろと嗤っていた。


「………ッ!別に、そんなことどうでもいいでしょ!」


「フフフ、素直に逃げられたと言えばいいのに。こんな性悪女の側でよくこれまで頑張ったわね、あの子達も……」


私は扇子で口元を隠しながら追い討ちをかけようとする。


「………よくも言ってくれたわね!だけど私はもう子爵令嬢じゃないわ、公爵令嬢ですもの!」


どや顔で言った彼女にかろうじて彼女に付いてきていた後ろのお友達(という名の取り巻き達)の顔には『あっ、もうこいつダメだ』とデカデカと書いてあった。


「公爵令嬢ねえ………元々貴方はただの平民であることをお忘れなく。

貴方のお父様が運良くメイデン子爵の養子になって子爵に、そのお父様が亡くなり可哀想に思った前バードミル公爵が貴女を養女にしたから貴女が公爵令嬢でいられるわけであって、前公爵の気分次第で貴方は貴族でもなんでも無くなるのよ!」


「………何よ!そんなこといったら、あんたもたかが5番目の王女じゃない!そんなのに言われたくないわ」


「確かに5番目だけれども、私は貴女とは違うんです。そういう貴女のような人の気まぐれで転げ落ちるような身分では無い!」


私が王女で無くなる事態が起こるのは王家が無くなる時、平和に陰りが見えるがしばらくその時は来ないはずなのだ。


「私は、貴女になんて負けない。これで勝ったなんて思わないで、絶対に手に入れて見せるんだから!」


彼女は捨てゼリフを吐いて逃げる。

そんな彼女を辟易した様子で取り巻き達は追いかけていった。


____


ジョアンナ=メイデン改めジョアンナ=バードミルは、後ろを付いてくる取り巻き達を引き下がらせて1人になる。


『貴女のような卑しい人に好き好んで付いてくる人なんているはず無いじゃない、これは貴女の負けよ。』


さっきの一連のやり取りでエリザベスが言わんとしていることをこのように受け取った彼女が肩を震わせて殺気に満ちたオーラを出して顔を歪ませていた。


「あの女、絶対に許さない!」


彼女は庭先に咲いていた紅薔薇を1輪摘んで、床に放り投げてから思いっきり踏みつけた。


「おやおや、せっかくの花が泣いてるよ。」


後ろからの声に慌てて振り向く、こんなところを義父に報告でもされたら面倒だ。


「あなたは__」


ジョアンナはその声の主を見て青ざめた、彼女も良く知っている人物だったからだ。


「そう怯えなくてもいい、私は味方だ。少なくとも貴女と一部だが利害は一致しているはず、だから私と手を組まないか?

上手くいけばあの王女をどうにかできる、これでどうだ。考えてはくれないか?」


ジョアンナはこの人物の言ったこと全てを信用した訳ではなかった、だが八方詰まりな今猫の手でも借りたい状況なのだ。


「考える必要なんて無いわ、分かった。あなたの提案に乗るわ」


これで悪魔に魂を売り払うことになっても良い、私をこけにしたあの女に報いを受けさせることができればそれで良い!

彼女は聖女ヒロインから悪女になった。

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