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ああ、私はただのモブ。  作者: かりんとう
初等科4年生
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覚悟は決めた

2月の下旬頃、私は遂に決心をした。

これまで水面下で起こっていた国王派と反国王派の対立が見事に表面化した。いいや“表面化させられた”と言う表現が正しいのかもしれないが、とにかく国王派は私を担ぎ出す気なのだ。


国王派………。建国以来あるいは王家から分家した家などの由緒正しい貴族の集まり、『自分達は神から支配を任された王に選ばれた人間だ』と言う少々高すぎるプライドを持っている保守派とも言える。

反国王派………。比較的最近、古くて300年ほど前に事業など何かしらの事が評価されて貴族となった新興貴族の集まり、『古き良き時代にいつまでもしがみつくな』と言う革新を図ろうとし、新しいものが好きな方々が多い。


(どっちもどっちなのよね、これ。)


なんでも新しくすれば良いというものでもないし、いつまでも古いものでいるのもいけない。





そうして3月の上旬、私はこの派閥を率いる決心を実行した。そしてまずは前バードミル公爵の事もあるので決して彼女達に手を出さないようにと忠告するつもりでご令嬢達を集めたのだが……


「王女、あの女を排除するべきです!」


「本当にたかだか子爵令嬢の癖に!」


たかだかとか言ってますが確か貴女の家も子爵家でしたよね?

この通り、頭に血がのぼった令嬢達に私の話は耳に入らないようだった。


「皆さん、ひとまず落ち着いてください。

皆さんの言い分は分かりますが、ここで彼女達と争ってはあちらの思うつぼでしょう?」


「確かに、皆!エリの言う通りよ……。立場的には向こうの方が弱い、この国は弱い者に優しい国ですから……。」


マリアの加勢のおかげか令嬢達も落ち着きを取り戻したようだった。

今、手を出しても意味はない。向こうの立場が弱い、それだけでたとえ私達が正しくて向こうが間違っていたとしても立場が強き私達が悪いと見られる風潮のあるこの国で手を出すのは得策とも言えない。


「ですが!それでは私達はどうすればよろしいのですか!?」


「メリー様の言う通りですわ………」


先程からうるさい令嬢だ、メリー……ああ、メリー=ブラックストーン子爵令嬢、そこそこ古くからある家の令嬢で『この派閥内の過激派』の1人だ。

この派閥内にもいろいろな人間がいる。

仕方ないと入った者、彼女達に負けたくないと入った者、これで反国王派自体を排除すると入った者……ざっと見た限りではそういう感じだろう。


「言論には言論をもって返す。

そしてなるべく人気の無いところには行かない、証人になってくれそうな人がいないからね。

ひとまずはそうしてくださいね、皆さん」


私は威厳のある、安心させるような声で言う。


「………分かりましたわ、分かりました」


渋々ながらも彼女達に納得してくれた。


疲れた、本当に疲れた。

ここまで説得するのに1時間ほどかかった。

私には、派閥争いだとかそういうことはあまり縁がなかったのでどのような事をすればよいか分からないが、彼女達を放置しておくよりも対抗勢力をつくり学園内の秩序を守ることは大事だということは理解できる。



「………で、結局派閥を率いる事になったんだ」


面白そうに言うシス王女。

貴女は他人事だから笑っていられるのであって当事者からしたらたまったものじゃない。


「ねえ、それでさ1つ聞いておきたいことがあるんだけど?」


「一体何ですか?」


ニヤニヤとするシス王女、彼女はこう言った。


「前世の話をしてよ、こういうのって転生者同士でしか出来ないじゃん!

ああ、私もちゃんと話すから!」


シス王女は私を無視して前世の話を始めた。

彼女は普通のOLだったらしい。普通に育ち、普通に学び、普通に仕事していた。それがある日、小説では“よくある”トラック事故に巻き込まれて死んだ。


「まあ、こんな感じかな……。死んだけどねえ、神様が登場して『ごめん今の間違えたわ』とか言ってチートさせてくれるとか男にモテる力とかそんなのは無かった……。

そんなのあったら私は、結婚してるわー!!!」


テンションの浮き沈みが激しい人だ、まったく……。


「じゃあ、次は貴女の番ね。さあ、話してごらんなさい!」



話す、一体何から話そう。

私の前世なんてそんなに大層スゴいものではない、むしろちっぽけなものだ。

そんなにスゴいものでもなければキレイなものでもなく、思い出したくもない過去でもある。


けれども、彼女にだけ話させておいて自分だけ話さないのは変だ、それに誰かに私のちっぽけな過去を知っておいてほしくて、


私は覚悟を決めて話すことにした。


「私は、事故で死んだ、のではありません……。私は、飛び降りたんです、マンションから……」


つっかえながら私は言った。

こんな気持ちになるのは、こんなにも息苦しく下腹部がじんわりと痛くなるのは久しぶりの事だ。


「私は__」

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