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ああ、私はただのモブ。  作者: かりんとう
初等科4年生
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彼女はコロコロ

あの反省会の出来事で私は本格的に“ヒロインちゃん”を敵に回してしまったようだ。

前までは追いかけまわされるだけだったのに、なんだかよく分からない方々を連れて私の所に一方的に突撃してくるようになった。


「__ってあんた聞いてるの!私の話。」


ヒロインちゃんのキンキン声が耳に響く。

聞いてるわけ無いじゃない、言ってることはおんなじことなんだからと言おうと思ったがここでは返って火に油を注ぐだけなのでやめておいた。


「……聞いていますわ。貴女の演説を拝聴させてもらいましたが言ってる意味がよく分からないんですけど」


「はぁ!?貴女、私をなめてるの!」


「全然なめてはいません。だって貴女、さっきから『ウチの屋敷の場所が良くない!』とか『ケチケチしないでもっと学費免除してよ』とか私にそれを言われた所でどうすることも出来ません。

それは屋敷は土地関係なのでその事は民部府、学費は教育府に言ってくれませんか?」


本当にどうして私にそれを言うのだろう?王女だからってなんでも自由に出来るわけではないんだけど。


「貴族になりたてのメイデン子爵にそんなコネがあると思うのですか?王女だというのに貴女はそんなことも分からないんですか?貴女に橋渡しになれということを言っているのを理解できないなんて、貴女は頭が宇宙人ですか?」


彼女がゾロゾロ連れている“取り巻きズ”の1人がそんなことを言う。

まるで達磨みたいな体型の女だ……確かどこぞやの男爵家の令嬢だったか?名前とか覚えてもないし呼び方はもう、“ダルマ”で良いか。


「宇宙人、私はそんなに変なことを言ったつもりは無いんですけど………。

というかコネなんて夜会とかで作れば良いじゃないの、わざわざそんな私に頼むほどのことでもないと思うけど」


「ですから、貴女はどうしてそうやって下級貴族をいじめるの!王女だからって思い上がってるんじゃないの!」


ダルマはキーキーとわめき散らす、ああヒロインちゃんと同類の人間だから彼女の所に集まってるのか………。

そして貴女の方こそどうして論点をずらすのですか?


「あの、どうでもいいんですけどキーキーうるさいのであっちいっててもらえませんか?もううんざりです」


「私は猿じゃない!」


キーキーをあんたのわめき声じゃなくて猿の鳴き声と受け取ったのか。


「あんた、覚悟しときな。私を敵にまわしたらどんな目に遭うか思い知らせてやる」


ヒロインちゃんは悪役のようなセリフを吐いた、そして偉そうな態度で彼女たちは教室から去っていった。


(それにしても、あの人達皆反国王派の家の令嬢達ばかりだったわね。

なるほど……メイデン家は反国王派と仲良くなったってことね)


そう思いながら私はこうも思った。


(本当に“レミゼの膿”になってしまったのね。)


しかもある種の浄化装置的役割があったヤヌス元子爵家とは違い質の悪い、1度走ったら何処に行くのか分からない暴走列車みたいな人達……。


「王女も大変だね……。あの人いっつも児童会でも変なことばっかり言ってるんだよね」


彼女達がいなくなった後は嵐が過ぎ去った後かのように静かだった。そして机に寝そべって脱力している私にジスト様が話しかけてきた。


「ジスト様……」


「本当にね。遅刻はする、制服は着崩す、言ってること二転三転コロコロ変わる……もうやってられない。」


相当イライラが溜まっているんだろうか、ちょっと口調がいつもと違う。


「ストレス溜まってるんですね……。」


「まったくだよ。

彼女がコロコロ、周りはオロオロ、僕はイライラ………これどうしたらいいんだろうね」


どうしたらいいんでしょう、私に聞かれても分かりません。


「私だって、彼女がギャーギャー、ダルマはキーキー、私はイライラですから……。

私もジスト様と似たような感情を今、持ってると思います。」


「意外と上手いですね、王女も。………それとダルマって誰のことですか?」


あっ、そうだった………。

“ダルマ”は勝手に私が付けたアダ名だった。


「エリ!大丈夫?あの方、乗り込んできたそうね……。私がトイレに行っている間にそんなことが起きてたなんて」


「マリア、大丈夫だよ。」


そうは言ったが本当は大丈夫じゃなかった。

私は気づいてしまった、彼女はフェルナンドという単語を一言も言っていなかった。

フェルナンド様じゃなくてなにか別の目的を見つけたのではと………私にはそう思えてならなかった。


(彼女、何をしようとしているの………)




今思えば、この時もうすでに兆候のようなモノは表れていた………。私はそれを心の何処かで気づいていながら見て見ぬふりしていたのかもしれない。

どっちにしろ私はそれに気づくべきだった、気づいていればきっともう少しなにかが変わっていたかもしれない。


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