あこがれのお忍び
児童会役員に不安を抱いていたが、今のところ何も起こらないまま夏休みに突入した。
私は宿題をこなしながらダラダラと過ごしていた。
「シャルル、貴方一体どこに行くの?」
部屋から出て1人歩き回っていると急いだ様子で何処かに行こうとしているシャルルを発見した。
「今日は義父の所に」
確かに彼の義父が所属する騎士団の方向だと私は納得した。
「何か悪いこと考えてるよね……」
顔に出てましたか。
私には以前から野望があった。それは1度でもいいから王宮から抜け出して王都に行くこと、未だに王宮や学園は慣れない所で息抜きをしたいと思っていたのだ。
「シャルル。貴方、私が王宮を出られるように手伝ってくれない?」
「無理、絶対に無理!そんなことしたら僕の人生どうなると思ってんの」
もし私に何かあったらシャルルの命自体無いかもしれない。
「それは分かってる!……もし何か言われたら私が強制したって言えばいいから」
なんだかんだシャルルは私に従ってくれる事となった。ここまで説得するのに5分、そんなに時間はかからなかった。
「それは良いんだけど、アリバイはどうするの?」
「……そうよね、それがあった」
アリバイは重要だ。
サスペンスだとアリバイがしっかりしているほど犯人、しっかりしてないのは疑われる人よね?
(見つかったときは見つかったときよ、その時に考えよう)
ここは2時間サスペンスの世界でも無いし私は誰かを殺した訳でもないからまあ必要ないかとアリバイは無視することにした。
「取り敢えず、これに着替えてよ」
シャルルが持っていたのは茶色い着心地の良さそうではない服だった。今私は紫色の重いドレスを着ていた、これだとすぐにバレるだろう。
「悪くないわ、むしろ動きやすい」
いくらフリルやレースを少なくしてもドレスは動きにくいものだった、それに比べて格段に動きやすく私がかつて慣れ親しんだ服に似ていた。
(前世を思い出すわ……)
そう思いながらシャルルに付いていった。
王宮からは案外簡単に出られて拍子抜けした、もっとスリルがあるものだと勝手に思っていたから……
「わあ!」
目の前に王都の景色が広がる、王宮とはまた違うものだった。
王都にお忍びで行くという私の願いはかなったのだ。




