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ああ、私はただのモブ。  作者: かりんとう
初等科4年生
57/229

お兄様はいつの間にか猫語をマスターしていたようです。

カール=ペンヨーク、彼は有名人である。

ペンヨーク家は代々詩人や宮廷画家など芸術分野の人間が多い伯爵家であるのだが、その中で彼だけは文官であるということで変わった人物だと言う噂だ。


「なぜ通してくれないのですか?」


そこだ、いつも特別監査室の2階に籠ってほとんど姿を見せなかった彼がどうしてこんなことをするのだろうか?


「仕事の邪魔です、仕事の……」


「都合が悪かった?ならまた今度にしておく…」


「………皆の邪魔になってはダメなので少し移動してどこかで良いのなら話、聞きますよ?」


ああ、もしかしてこれは知られてはいけない何か密談でもしているのかな?だから通せんぼされたのかも……と私はそう考えることにした。

私とシャルルはカール様に付いていって王宮内の小部屋で話をする事となった。


「王女、何の用で特別監査室に?」


「私の友人のマリア=ローザンヌ公爵令嬢の様子がおかしいの……それでローザンヌ公爵家で何かあったのかと思って……」


カール様は何か考えるような仕草を見せた。


「分かりません……ですが強いて言うなら“アレ”じゃないかと私は思うんですが?」


「“アレ”って何?」


「いやこの前ローザンヌ公爵が私の所にやって来てですね__」


カール様の話をまとめるとこうだった。

優秀な官僚としてだけではなく、チェスの名人として名高いカール様の元にローザンヌ公爵が勝負を挑みに来たそうだ。そしてカール様の勝ちで勝負は終わったらしい。


「勝負の次の日からローザンヌ公爵がおやつれになったというか…元気が無くなったんですよね」


仮にも公爵ともあろう方がそんなことでくよくよしてていいのだろうか?関係なさそうな気がする。


「ちなみにそれはいつの事ですか?」


「ええっと、確か去年の夏頃だったような……あれ?秋だったかな?まぁその辺りだったと思います。」


「それ、全然この前じゃありません!」


………全然参考になる話が聞けなかった。


カール様と別れて取り敢えずブラブラと歩き回っていると、


「「「ニャンニャンニャゴォ!!」」」


猫の声がした……。

これはパレスくんがまた連れてきたのかと思って声の方に行くと猫に囲まれるお兄様の姿があった。


「お兄様、どうしたの?」


「エリザベス!良い所に来た!実はこの子達の仲間のクロが行方不明らしいんだ、探すの手伝ってくれ」


「えっ、猫を?もう暗くなるし明日にすれば?」


夕方、陽は沈みかけている……


「それじゃダメなんだ!クロは臆病者で暗いのは苦手な子だから」


「お兄様、クロの事を何でそんなに知ってるんですか?」


クロは猫だ、喋れるわけでもないのにどうしてそんな情報を知っているのだろうか。


「俺にはこの子達の言葉が分かる!」


「はぁ?」


お兄様はいつのまにか猫語をマスターしていたようです……

取り敢えずお兄様曰く猫が最後にクロを見たのは何と特別監査室前らしい。


情報を得るために特別監査室に行くと、カール様は通せんぼしていなかった。


「クロ!どこだ……」


お兄様が突撃すると……そこには、


「かわいい、かわいいね君」


クロ(?)と思われる猫を撫でまわしている中年男性の姿。


「……ローザンヌ公爵、クロが嫌がっています!離してください」


お兄様がクロをローザンヌ公爵から引き離し外へ逃がした。


「………………」


ローザンヌ公爵の顔はこの世の終わりと言った状態だった……そして、そのままトボトボと帰っていった。


「彼、猫が大好きなんですよ……」


アベルの声が静まり返った特別監査室に響いた。


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