女を捨てた?
彼女は、それからもフェルナンド様に猛烈なアタックをしているようであった。
冬になり、寒くなってきた。なのにヒロインちゃんは寒さなど気にせず私に持っている敵がい心の様なものをぶつけてくる(いつも、放課後に)。
「…………」
今日もまたあの非常識なピンク髪が視界の端に映った。
(あの、柱の後ろに隠れてるのみえみえなんですが……これは素直に指摘した方がよろしいのでしょうか………。)
そう、ヒロインちゃんと私の2人だけの仁義なき戦いは続いているのだ。
(あの方のせいで特別監査室にも行きづらくなったんですが………。)
いい加減鬱陶しく感じた。
「そろそろ特別監査室にも顔出したいし、彼女本当に邪魔なんだよね……しょうがない、プランAを使うか。」
タッタッタと走って私は中庭の方へ逃げた、そして入り口の柱の隅にサッと隠れた。
何故中庭なのか?それはすぐにわかる。
「どこに逃げたのよ!卑怯もの、逃げるなんて卑怯よ!」
ヒロインらしくない、ドスドスと足音をたてながら中庭に入ってきた。
それにしても、逃げてるのは貴女が勝手に私を尾行するからでしょ………。
「「「シャー!!」」」
茂みから猫達が飛び出してヒロインちゃんに飛びかかる。
「ギャアアアア!何よ、この野良猫!」
ヒロインちゃんは最早女を捨てたのかというくらい野太い声を出す、流石に私も引きました。
「フーッ!」
やっぱり猫達はヒロインちゃんに威嚇する。
ちなみにこの猫達はパレスくんになついていた猫達である。
何故猫達が中庭に戻っているのかというと、猫のたまり場になってしまった特別監査室の惨状にアベルがキレてパレスくんは泣く泣く中庭に戻るように猫達を説得したということだ。
(………パレスくんは猫語も操れるのかしら?)
そんなことを思いながら、私はサッと中庭から逃げていった。
しかし、彼女は意外としぶとかった。
(プランAが効かないか………。やっぱり玄関までどうにか走って馬車に飛び乗るしかないわね。
中庭から玄関までは200Mくらい……出来るかしら?)
「待てぇぇ!」
後ろを見てこれは迷ってる暇ないわ、そう思った。
そして、なんとか玄関前の廊下まで来た。
そこで私は走るのをやめる、先生がちゃんと淑女らしくしているか監視しているからだ。
「ごきげんよう、王女殿下。」
「ごきげんよう、先生。」
私はあくまで走るなどというはしたないことをしていませんという空気を一生懸命身にまとい先生の監視を潜り抜けた。
そして、玄関を抜けると急いで馬車に飛び乗り王宮へと急いだ。
後ろから、
「メイデン子爵令嬢、廊下は走ってはいけません!」
「なんなのよ!」
と言う声が聞こえてきた。
そして、特別監査室に息を切らしながらたどり着く。
「………ベス、大丈夫か?なんか、顔ヤバイぞ…」
「全然大丈夫、なんとか切り抜けたから。」
「そ、そうか、なんかよく分からんが良かったな」
ヘンリーにとても心配された。




