はじめての気持ち
「………………」
今のこの状況を説明しよう。
前世を思い出した不登校王女の私は、何故か学園長に呼び出されたが、返事がないことに痺れを切らして学長室のドアをぶち破ろうとしたが最悪な形で失敗した。
「……あぁ、どうしましょう。」
まさか人が出てくるなんて!しかもその人に体当たりしたあげく押し倒してしまうとは…………ああ!まだドアに思いっきり激突してたんこぶ作った方がはるかにましだった。
「えっと、あのすいませんが起き上がれないので…」
気まずそうに言う男性はどいてくれという顔をしている。
「あ、はい。す、すいません!」
私は慌てて男性から離れて立った。
………かっこいい!彼は七三分けで切れ長の目に高い鼻、色男としての条件を満たしていると私は思う。10人中8、9人が色男と評するだろう。彼の七三分けはさっきの出来事でやや乱れているが、それすらも色気に変わってしまっていた。
「王女様!あなたはまた騒ぎを起こして!今日という今日は許しませんよ。」
学園長が小言を言ってくるが私の耳には入ってこない。目の前のこの男性から目が離せなかった。
(なんという私好みの男なの?一体誰。)
「王女様!聞いていますか!?」
まだ続いてたのか学園長の話。ごめん、全然聞いていなかった。
「一体、どれの事?貴方の自画像に落書きしたことなら反省しているわ」
「……その事ではありません、制服の件です。王女様が制服をお気に召されなかったので新しく作り直したものが完成したので、」
学園長がそばにあった布をバッと取り外す。
現れたのは趣味の悪い、これでもかというくらいにフリルやリボンをふんだんに使われ、ゴッテゴテに飾り立てられた見ているだけで目がチカチカしてくるドレスであった。
「…………趣味悪!いやいや、普通の学園の制服で良いよ。」
その趣味の悪いフリルの塊よりはその左側に飾ってある学園の制服の方が数億倍はマシである。
「……え?」
「いや、だから左の普通の制服でいいよ。これは売って金にするなりなんなりしてよ。」
「で、ですが……」
とりあえず、今着ている簡素なドレスを脱いでこの制服に着替えるべきね。
「マリッサ、とりあえず制服に着替えたいから何か遮るものを持ってきて!」
「持ってきています。」
そして、5分後…
「どう?似合うかしら」
「とてもお似合いですよ、王女殿下。」
そう言ったのはあの男性だった。ちなみに学園長はいつの間にかいなくなっていた。
「ぁ、そういえば貴方の名前を聞いていなかったわ」
「はじめまして、王女殿下。私は特別監査室のショーン=オンリバーンでございます。」
「王女殿下はやめてよ。堅苦しいわ…エリザベスって呼んで!」
「で、ですが。それは……エリザベス様、ご勘弁ください。」
……エリザベス様か。だけれどうれしい!どうして?
「まぁ、いいわ。貴方の事は、ショーンと呼ぶわ。」
私にはどうして、出会ったばかりのこの人といることに幸せを感じるのか分からなかった。ただ、このささやかな時間が続いてほしいそう思った。