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ああ、私はただのモブ。  作者: かりんとう
初等科3年生
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式典と非常識な方々

そして、初等科3年生の10月……。

忘れられない出来事が起こった………。それは、2番目の姉マーガレットの婚姻前記念式典の時のことであった。


初等科3年生になると今までやらなくても良かった事をしなければならなくなる。

例えば、前に私が散々な結果を出したテストだったりこういう王族として式典への参加もそうだ。


「式典かー……」


「王女、そんなにガチガチにならなくっても良いんですよ!王女は椅子に座って、陛下が始めの言葉を言った後は友人のところで談笑したり自由にしてて良いんですから」


「ジューンはそう言うけど本当にそれで良いの?」


「王女、それで良いんですよ」


アベルもそうニコニコしながら言った。

拍子抜けした、“婚姻前記念式典”などと仰々しく名前があるから形式ばったものだと思っていた。


そして式典では、

部屋の1番奥の壇上に国王夫妻、壇下の1番左には王太子、そしてその隣に式典の主役のマーガレット王女、アン王女、イザベル王女、そして1番右端に私が座っていた。


「今宵は、わが娘マーガレットのために集まってくれたこと大儀であった。」


国王の始めの言葉が終わると、本当に貴族達は談笑を始めた。

私もフェルナンド様やマリアの元へ向かい話を始める。


「王女、そのドレスとても良いものですね!」


「本当ね、エリにとても似合っているわ」


そう私を誉めるフェルナンド様は絹のシャツの上に金の刺繍が入った黒いジャケット、マリアはフリルやレースのたくさんある深い青のドレスだった。

そこにアベルとヘンリーが会話に加わってきた。


「よう、ベ、エリザベス王女…似合ってるなドレス」


ヘンリーはいつものように“ベス”と呼びかけて慌てて言い直していた。


「皆、若くてなかなか良いじゃないか!」


アベルはうらやましそうに言う。


「ヘンリー、本当に似合ってる?」


私が着ているのは、銀糸の刺繍の施されたきらびやかな装飾は少ない薄い黄色のドレスだ。

ゴテゴテとしたモノは苦手なので仕立屋に頼んでシンプルで機能的なデザインにしてもらった。


「ああ、似合ってるぞ。こうしてみたら王女なんだなぁって思う」


「ちょっと!どういう意味よ、それは。」


「褒め言葉だよ、褒め言葉。けど、ちょっと背伸びしすぎじゃねぇか?もっとフリルとか有った方が子供っぽくていいと思うけどな」


「確かに、ヘンリーの言い方はぶっきらぼうなものですがもう少し可愛らしさもほしいですね」


「そっか……分かった。」


私がアベルやヘンリーと話し込んでいる間にマリアとフェルナンド様はどうやらお兄様の元へ向かったようであった。私は2人を促してそちらに向かおうとしていた。


「あら……」


すると、私の目の端の方に純白のドレスを着た見知った少女とその両親の姿がある。

頭上には凝った細工のティアラ、胸元には瞳の色に合わせたのだろうかルビーのネックレスが。

そして、カツンカツンと彼女の履いている趣味の悪いヒールのたてる音で不快そうに扇子で口元を隠し眉を潜めている貴族夫人達もいる。


「なんちゅう非常識な格好の集団だよ、あれ」


ヘンリーとアベルはあまりのマナーの無さに唖然としている。

少女だけでない、両親もだ。式典では夜会と違いあまり華美な格好をするのをよく思わない人もいる。だが、その親子は夜会でもそんなにギラギラとした格好はいない、普通の感覚を持ち合わせた者ならばとてもじゃないが直視できない悪趣味なものだった。


「なぁ、あれは一体どこの家だ?………なんとなく予想はできるが、あれはとてもじゃないが……。」


「あれは、新しくメイデン子爵となった方とその御令嬢だよ。御令嬢の方は同じクラスだし、知ってる」


「やはりそうでしたか……ソルティーさん可哀想に」


アベルはかつての部下の事を思っているようであった。彼はまともな人間であったのだろう少々無口で取っつきにくいだけで、それがこんな非常識な人が親戚であったという不幸を。


「取り敢えず、フェルナンド様達の所へ行きましょう……」


「そうですね、フェルナンドのことをあの御令嬢は狙っているのですから………」


私達はフェルナンド様の所へ急いだ。



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