王女と猫に好かれる男
9月、夏休みは終わった。
私はあのシス王女の発言について考えている。あれはとても貴重な意見だ、“攻略対象が悪”と言うあの発言だ。
「私はなにができる?私の目的は、ルイ=L=ドレリアンが生まれる未来を守ること……なのかしら」
ルイ=L=ドレリアン。
特別監査室室長で後に宰相となるアベル=ライオンハートの孫、ここよりも西の帝国を舞台にしたゲームの攻略対象……
「私に、出来るの?私には他に目的が……」
ションちゃんの側にいる、__そうではない、お前はフェルナンドを守れ、未来を守れ。他の攻略対象にヒロインを近づけるな!
もう1人の私は訴える。だけれども、ルイが生まれなかったところで私に何の関係があるの!と言う私もいる。
「エリ、どうしたの……?顔が真っ青よ……」
「なんでもない、ちょっと保健室に行くわ。」
マリアが心配しているがそれを見て見ぬふりをして保健室へ向かう。
(アベルが悪徳宰相ね……人間である以上功罪は誰にだってある、だけれどもアベルが極悪人になるとは思えない。)
誰かに嵌められた?
彼女の言うようにヒロイン達は悪でその悪に負けてしまった?
考えても考えても分からない。
「あれ、エリザベス王女……どうしたんですかぁ?」
声のする方を向くとそこにいたのは独特な語尾を伸ばす特徴のあるパレス=コノユライン子爵だった。
「あ、パレスくん……どうして学園に?」
「オンリバーン侯爵の代理ですよぉ、忙しいから変わりに言ってくれって言われてね」
「…なんか特別監査室の人って皆講演会にお呼ばれするのね、そんなイメージがあるわ」
「それは室長やオンリバーン侯爵達だけですぅ、私にそんなのは絶対に来ないですよぉ」
パレスに付いていく。保健室に行くと言うことをすっかり忘れていた。
「あ、猫だぁ!王女、猫ですよぉ」
「あら本当だわ、野良猫かしら?」
中庭には、白猫や黒猫が数頭いた。
パレスくんはどうやら猫に好かれる人のようだ、猫達はじゃれついていた。
「……猫からずいぶんと好かれるのね、猫達も嬉しそうだわ!」
「ウフフ、猫達は僕の事を分かってくれる気がするんですぅ。」
そのままパレスくんは猫を引き連れて去っていった。
(あれじゃ猫のボスみたい……)
パレスくんのお陰か猫のお陰か気持ちは大分落ち着いた。
「あ!保健室に行こうとしてたんだった!」
そうだった、保健室に行こうとしていたんだった!忘れてた。




