ひどいシナリオ
ナクガア王国出立の前日、私はようやくシス王女と話す機会がやって来た。
「やっと話すことが出来たわね………」
「そうだね、じゃあさっそく教えてくれる?」
シス王女は覚悟を決めたようにホッと息をついてから分かったと言った。
「このゲームでね___」
話を聞いた後、私は呆然とした。
どうして、私がそんな目に遭わなければいけないんだ…どうして、処刑され幽閉され、死ななければいけないんだ!そんな思いがシミのように頭のなかを駆け巡った。
「それで、1つ気になるんだけどアベルはなんでマルチウス帝国に亡命するのかは描かれてるの……?」
そう、前からの疑問である。
「ああアベル=ライオンハート、彼はね宰相の立場や特別監査室を利用して国家転覆をしようとして失敗したから亡命って設定じゃなかったかしら?」
「アベルが国家転覆?冗談でしょ……アベルや特別監査室のみんなほどレミゼのことを考えてる人はいないよ!!」
「私に言わないでよ……確かね、ゲームの始まりの言葉は_」
ここは“幸福な国レミゼ王国”。名宰相が死に悪徳宰相一味に牛耳られた国は腐敗の一途をたどっていた、それを止めようと若きエリート達は立ち上がる。エリート達の傍らに彼らを支えし乙女1人あり、彼女はジョアンナ、後に歴史に名を残す女性である。
「_だったかな、確かね物語開始は中等科2年生の時でジョアンナの父がようやく貴族籍に入れてメイデン子爵令嬢として入学してくるところからだったわ。」
「イヤイヤ、ようやく入れるどころかもう入ってますよ?それにイチヤ王子ルートでは癒しになったと聞きますが“第2のレミゼの膿”呼ばわりされて嫌われてますが?」
「前世活用していろいろとしたのかしら?
“レミゼの膿”って確かミリアン=ヤヌス子爵令嬢の生家の事よね、確か彼女はアルベルトルートでマリアと一緒にヒロインちゃんに壮絶ないじめをするのよね~。」
「いや、彼女はもう学園に居ませんけど……ヤヌス子爵家自体もうお取り潰しされてますよ?」
「ええ!?」
まさか彼女にそんな役割があったとは……ゲームのシナリオかなり変わるのでは?
それにあのヤヌス子爵家以上のクズだと有名になっているヒロインちゃんに近づく方がそもそもいるのかしら?
「……フェルナンド一筋なら問題ないと言いたいところだけど、彼を攻略されるのは困るのよね……。」
「もしかして、ルイ=L=ドレリアンのこと?」
「そう、彼の母親はフェルナンドの婚約者だから……彼女にそんなことされると未来が変わっちゃうのよね」
この先の未来を変えてしまう、それはやってはいけないことだろう。
「ねえ、それとさこれは私の推測なんだけど悪徳宰相アベル=ライオンハートは本当は悪ではなかった……本当の悪は“攻略対象達とヒロイン”って考えられるのよね」
「どうして?」
「昔ね、ヘンリー=ベアドブーク元駐ナクガア大使がこの国に来たときにね彼のような人達が国家転覆しようとしたのかなって思ったのよ……」
「なるほど、私も同じよ。それでショーン=オンリバーン侯爵はどうなるの?」
彼はどうなるのだろう、きっと彼は正々堂々と自分を貫くのではないかとエリザベスは想った。
「分からない、ごめんね。彼はね名も無き存在だからゲーム内では語られていないのよ」
「そう、そうなのね」
シス王女はそう言うエリザベスの眼が虚ろであることが心配であった。




