おや、貴女もですか………?
イチヤ王子の姉である彼女に引っ張られ私はこじんまりとした……いいや、正直に言うと寂れた小さな教会へと連れられた。
教会はずいぶんと人が訪れなくなって久しいのだろうか、床に敷かれている絨毯は埃を被っており内装も王城内と比べてずいぶんと前時代的なモノであった。
「ここね、私の隠れ家なんだよね!ちょっと汚いけど我慢してね。」
「はぁ、それにしても貴女は何故私をこのような所に?」
「ああ、そうだよね………それに自己紹介まだだったね。私はシス、貴女の婚約者のイチヤ王子は私の弟なの」
カラカラと笑いながら彼女は自分の自己紹介をした。
「エリザベスと申します、よろしくお願いします。」
「知ってる、知ってる、弟から聞いてるから。」
私は彼女が一体何が目的でこのようなことをしたのか分からず気味が悪く感じた。
「…………あんた、転生者でしょう。」
いきなりの爆弾発言、またしても私は転生者に出会ったようだ。
あの転生ヒロインの時ほどではないにしろ驚いた。2度目だからだろうか私は思いの外早く衝撃から立ち直ることができた。
「ええ、そうよ。貴女もそうなのね……」
その問いに彼女は重々しくうなずいた。
「それでいきなりだけど、ヒロインちゃんも転生者なのか、そうだとして誰ルートに入ろうとしてるのかを教えてくれないかしら」
「そうよ。そしてヒロインは、フェルナンド=ライオンハートを攻略しようとしているみたい……詳しいことは分からないけど」
「………っ!どういうこと、どうしてフェルナンドを?」
どうしてそんなに驚いているんだろう?何故そんな反応を……
「何をそんなに驚いているの?」
「………物好きなヒロインね、サポートキャラのフェルナンド目当てなんて」
「フェルナンド様ってサポートキャラなんですか!?」
「ええ!?貴女………もしかしてゲームの記憶無いの?」
私も彼女も2人とも驚いている。そうだろう、ゲームを知っていると思い話していたらまさかの相手はゲームのことを知らなかったのだから。
それにしても、やはりフェルナンド様は攻略対象ではなかったのか……。確かにフェルナンド様はそういう感じがしないと思っていた。
「やはり“瞳を閉じて、恋の学園”以外にゲーム出てたんですか?」
「“恋する幸福な国で”っていうゲームがね……。恋の学園シリーズが当たったから調子に乗ったんじゃないかな?出来はイマイチだったのよね」
「………それでどんな内容で誰が攻略対象なんですか?」
「それは_」
姉上!姉上!と、遠くからイチヤ王子の声が聞こえてくる。
「そろそろ貴女を帰さないとさすがに怒られちゃう、続きはまた今度ね。」
「え、ええ!?ちょっと待ってください!」
私の制止を聞かずシス王女は教会から飛び出していった。
埃が舞って、私は咳をした。
「……フェルナンド様は攻略対象じゃなかった事が知れただけでも今回は良かったのかしら」
そう思っておこうと私は教会から出てイチヤ王子の元へ走っていった。




